胃もたれや胃痛などの症状が気になり、医療機関で検査をしてみたものの「特に異常はみられません」と診断を受けて不思議に思った経験がある人もいると思います。
このような病態に対して、名付けられたのが機能性ディスペプシア(Functional Dyspepsia : FD)です。
医学的には、医療機関で行われる一般的な検査で、見た目では明らかな異常がないのに、慢性的(病態が長引く)または反復性(病態を繰り返す)に一定の頻度でつらいと感じる症状が続いている状態です。
機能性ディスペプシア(FD)は、2013年に正式な診断名として認可された、いわば新しい病気です。
ほんの数年前まで、このような症状を訴える患者さんに対して「気のせいではないか」「もう少し様子をみましょう」と伝える医師も少なくありませんでした。
異常はないと言われても症状が確かにあるため、患者さんはイライラしたり、症状の繰り返しに動揺したり、ほかの病気なのではないかと不安になった方も多いようです。また、この辛さが人にわかってもらえず、悩んで辛い思いをした方もいらっしゃいます。
機能性ディスペプシアの定義
「慢性的または反復性に一定の頻度で起こる」というのは、具体的な目安として6ヶ月以上前から症状が現れはじめ、3ヶ月前ごろからは週に1回〜数回以上、不快な症状がみられる状態をいいます。
機能性ディスペプシアの定義はあくまでも、この疾患の原因を調べ、患者さんに合う最適な治療法を見つけるための臨床研究を行う場合の基準に過ぎません。
日々の診療の中では、1ヶ月程度以上、症状が続く場合には機能性ディスペプシアとみなして診断が行われています。
機能性ディスペプシアは何科を受診する?
消化器官の病態を診断できる消化器内科の専門医をはじめ、さまざまなストレスとの関係が深い病態(心身症:機能性消化管障害)を専門的に扱う「心療内科」の受診が適しています。
機能性ディスペプシアの原因は後ほど詳しく解説しますが、主に
- 遺伝要因
- 生理学的要因(消化管運動機能の障害や内臓知覚、炎症などの病気、ピロリ菌感染)
- 心理社会的要因(日常のストレス、精神心理状態)
上記のような、さまざまな要因が考えられています。
これらの要素が互いに、そして複雑に影響しあって発症するといわれています。
比較的、歴史の浅い機能性ディスペプシアは、消化器内科以外の医師の間では広く知れ渡っていないことも多かったため、慢性胃炎などと診断されてしまった患者さんは現在でも少なからずいらっしゃると思います。
ご自身の症状と照らし合わせて機能性ディスペプシアが疑われ、現在治療を受けていない方、もしくは今の治療で改善が見られない方は、消化器内科・心療内科の専門医の受診を推奨します。