食後すぐは血糖値が急激に上昇する時間帯のため、医学的評価には適しません。
正確な食後血糖の評価には「食後2時間値」が用いられます。これは、食後のインスリン分泌や血糖処理能力を評価するための標準的なタイミングです。ご自身で測定する際も、できるだけ食後2時間後を目安にするとよいでしょう。
人が健康的に生きていくためには、エネルギーが不可欠です。わたしたちは、このエネルギーを食物から得ています。食事によって摂取した炭水化物は、胃や腸などで分解されてブドウ糖(グルコース)となり、血液中を流れています。
血糖値とは、この血液中をながれるブドウ糖(グルコース)の量のことです。生きていく上で必要不可欠なグルコースですが、その量は多すぎても少なすぎてもいけません。適度な量を保っていないと、体に悪影響を及ぼします。
本記事では、糖尿病の専門医に監修していただき、血糖値の正常値はどれくらいなのか?高血糖や低血糖によって起こる症状と基準値を解説しています。
食事をして、糖が体内へ吸収されると血糖値は上昇します。そして、血液によって全身に行き渡り、細胞が糖を次々に利用すれば血糖値は下がっていきます。このように、血糖値は1日のうちで変動し、食前などの空腹時は低く、食後には高くなります。つまり、空腹時と食後ではその正常値が異なります。
この2つの数値から、血糖値が正常かどうかを判断します。
ただし、両方の基準値が正常値範囲内だからといって、かならずしも安心できるというわけではありません。また、反対に正常値範囲から少しでも外れたからといって、病気の診断が下るわけでもありません。あくまでも指標のひとつとして、総合的に診断されます。
※ 血糖値の量は「血液1dL(1デシリットル)のなかに、グルコースが何mg含まれているか」という基準で数値化(mg/dL)されます。
日本糖尿病学会では、空腹時血糖値の正常範囲を以下の通りに設定しています。
正常値 | 70〜99 mg/dL |
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正常高値 *1 | 100〜109 mg/dL |
*1 空腹時血糖値 100〜109 mg/dL の方は、将来的に糖尿病への以降をしやすい「隠れ糖尿病予備軍」である可能性が高いことがわかってきました。
そのため、日本糖尿病学会では「正常値」ではなく「正常高値」という範囲を設けました。(2008年)
日本糖尿病学会では、食後血糖値の正常範囲を以下の通りに設定しています。
正常値 | 70~139 mg/dL |
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食後2時間以内にこの数値におさまれば正常値範囲内ですが、食後2時間経過しても、血糖値が 「140~200mg/dL」の場合は食後高血糖と診断されます。
すべての生命活動にはエネルギーが必要です。わたしたちが食事によって摂取した糖は、小腸で吸収されて血管に入り、活動のエネルギー源として全身の細胞に送り届けられます。
細胞はこの糖(グルコース)を取り込むと、体内で分解(燃焼)されたり合成されたりするプロセスを繰り返します。これを糖代謝といいます。それによって取り出したエネルギーによって、人間は生命活動を維持することができます。したがって、生きるためには血糖値が常にある程度、一定の範囲に維持されていなければなりません。
そこで問題となるのが、
このような正常値範囲から外れた状態です。
血糖値は高すぎても、低すぎても体にとっては悪影響を及ぼします。
血液中のブドウ糖の濃度が高い状態を「高血糖」といいます。高血糖は、さまざまな病気を発症する危険因子となるため、血糖値を正常値まで下げることが重要となります。
日本糖尿病学会では、高血糖の基準値を以下の通りに設定しています。
空腹時高血糖 | 110~126mg/dL |
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食後高血糖(2時間) | 140~200mg/dL |
血液中のブドウ糖の濃度が低い状態を「低血糖」といいます。糖が燃焼するために細胞に取り込まれ、貯蔵するために肝臓や筋肉などに取りこまれると血糖値は下がります。
しかし、健康的な人であれば、たとえ空腹時でも血糖値が70 mg/dLより低下することはほとんどありません。血糖値をあげるホルモンがバランスを取りながら、血糖値を一定レベルでコントロールしてくれます。そのため、本来は極端な低血糖状態にはなりません。
低血糖 | 70 mg/dL 未満 |
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血糖値の正常値範囲を超え
この状態が続くと、
上記のような症状が現れます。
これは糖尿病の代表的な自覚症状でもあります。しかし、糖尿病の初期ではほとんど自覚症状がありません。つまり、これらの症状が続いている場合は、血糖値がかなり高くなっていると考えられます。
少しでも異変を感じたら、すぐに医療機関を受診するようにしてください。
血糖値が高い状態がさらに続くと、下記のような症状が現れます。
これらは糖尿病の合併症によって起こる症状です。早急に適切な治療が必要です。
血糖値が60〜70 mg/dL 未満になると、
このような症状が起こります。
これは血糖を上昇するはたらきのあるホルモンが分泌されることで起こる症状で「自律神経症状(交感神経症状)」といいます。
さらに、血糖値が50 mg/dL 程度になると、
このような症状が起こります。
これは脳の機能が徐々に低下するために起こる症状で「中枢神経症状」といいます。
さらに、血糖値が50 mg/dL 以下になると、
このような状態に陥ります。
これは大脳機能低下が進行したことで起こる症状であり、ときに脳の重大な後遺症や生命の危険が生じることもあります。
一般的に糖尿病かどうかの判断は、血糖値によって行われます。一定の基準値を超えて血糖値が高い場合は、糖尿病のリスクがあると診断されます。
しかし、血糖値の異常によって疑われる病気は糖尿病だけではありません。
血糖値の軽度な上昇(110〜126 mg/ dL)
など
また、食事摂取後も同程度の血糖値がでます。
糖尿病の治療として血糖値を下げるお薬を服用する場合がありますが、その影響を受けて低血糖になることがあります。
糖尿病以外で、低血糖を起こす病気としては、
などがあります。
そのほか病気以外の原因としては、
などの影響によって低血糖になる場合があります。
血糖値の正常範囲(空腹時70~99mg/dL、食後2時間値140mg/dL未満)は、一般的には全年齢共通の基準です。
ただし、高齢者の場合は低血糖のリスクや持病の有無、日常生活の自立度などを考慮し、HbA1cなどの目標値は個別に設定されるのが一般的です。そのため、「年齢に応じて変わる」というよりは、「個人の健康状態に応じて柔軟に評価する必要がある」と考えるべきでしょう。
食後すぐは血糖値が急激に上昇する時間帯のため、医学的評価には適しません。
正確な食後血糖の評価には「食後2時間値」が用いられます。これは、食後のインスリン分泌や血糖処理能力を評価するための標準的なタイミングです。ご自身で測定する際も、できるだけ食後2時間後を目安にするとよいでしょう。
血糖異常は自覚症状がないまま進行することが多く、「サイレントキラー」とも呼ばれます。
症状がなくても、血糖値が基準から逸脱している場合は、合併症(網膜症、腎症、神経障害など)のリスクが高くなるため、医師の判断に基づく早期の対応が重要です。特に糖尿病予備群や境界型の場合、生活習慣改善だけで正常値に戻ることもあるため、軽視せずに取り組みましょう。
空腹時血糖値が高め(100~125mg/dL)であっても、食後血糖値が正常というケースは「空腹時高血糖型糖尿病」や「耐糖能異常(IGT)」の可能性があります。
これは糖尿病の前段階であり、放置すると本格的な糖尿病へ進行するリスクがあるため、医師の指導のもと、生活習慣の見直しや定期的な検査が必要です。
食物繊維を多く含む野菜類、玄米や雑穀米、大豆製品、きのこ類など
血糖値の急上昇を抑える効果が期待されている食品としては、食物繊維を多く含む野菜類、玄米や雑穀米、大豆製品、きのこ類などが挙げられます。また、酢や納豆などは、血糖値上昇を緩やかにする可能性があるとする研究もありますが、効果には個人差があり、現時点では医療的効果として確定されたものではありません。バランスの取れた食事を心がけることが、血糖コントロールの基本です。
インスリンの働きが一時的に弱まることで起こります。
朝方に血糖値が高くなる現象は「暁現象(ドーン現象)」と呼ばれ、成長ホルモンやコルチゾールなどのホルモン分泌により、インスリンの働きが一時的に弱まることで起こります。糖尿病の方ではこの傾向が強く表れやすく、適切な食事・運動・薬物療法が必要になることもあります。朝の高血糖が続く場合は、医師に相談しましょう。
血糖値が基準より少し高いと診断された場合、「糖尿病予備群」の可能性があります。
血糖値が基準より少し高いと診断された場合、「糖尿病予備群」の可能性があり、放置すると糖尿病に移行するリスクがあります。まずは食生活や運動習慣の見直しを行い、再検査を受けることが大切です。また、HbA1c(過去1~2か月の平均血糖)を併せて確認することで、より正確な状態が分かります。早期の対応が予防につながります。
はい、本当です。
ストレスを感じると、血糖値を上げるホルモン(アドレナリン、コルチゾールなど)が分泌され、一時的に血糖値が上昇します。特に慢性的なストレスは、インスリン抵抗性を高め、糖尿病リスクを上げる要因にもなります。ストレス管理や十分な睡眠、適度な運動は、血糖コントロールにも良い影響を与えます。
血糖降下薬やインスリン治療中に食事を抜いたり、運動をしすぎたりすると、薬が効きすぎて低血糖になることがあります。
また、アルコール摂取や体調不良も影響します。特に糖尿病の治療では「血糖値を下げすぎないこと」も重要で、自己判断で薬の量を変えるのは危険です。必ず主治医の指導に従って管理しましょう。
妊娠中はホルモンの影響で血糖値が上がりやすく、「妊娠糖尿病」のリスクが高まります。
これは母体だけでなく胎児の健康にも影響を及ぼすため、妊婦健診での血糖チェックは非常に重要です。妊娠糖尿病と診断された場合でも、食事指導や運動療法で血糖を管理することで、多くのケースは安全に出産できます。早期の発見と管理が鍵です。
二宮内科クリニック二宮 一見 先生
当クリニックは平成10年5月に盛岡市愛宕町に開業しました。
一般内科診療はもちろんのこと、糖尿病などの生活習慣関連病、膠原病・リウマチ疾患を専門とするクリニックです。
皆様の健康を守るため、優しく、わかりやすい説明を心がけ、診療に取り組んでおります。
お体に不安を感じる方は、お気軽にご相談下さい。
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