アデノウイルスは、さまざまな病気の原因になります。それぞれの症状の特徴は以下の通りです。
プール熱 – 高熱・喉の痛み
プール熱とも呼ばれる咽頭結膜熱は、夏風邪の代表格とされていますが、夏だけでなく1年を通して感染リスクがあります。名前からプールで感染すると思われていますが、プール以外のところで感染する場合がほとんどです。
- 39〜40度の高熱
- 喉の奥の腫れ、痛み
- 喉の白っぽい糊のような分泌物
- 白目の充血
- まぶたの裏側の赤み
- 白くネバネバした目やに
- 眩しがる
など、さまざまな症状が現れます。赤ちゃんの場合は下痢や嘔吐を伴うこともあります。
高熱が続くので水分をしっかりと摂ることが大切です。熱で辛い時は解熱薬が、目の症状(結膜炎など)には点眼薬が処方されるなど、治療の基本は症状を和らげる対症療法となります。
はやり目 – 目の充血・目やに
はやり目(流行性角結膜炎)は、アデノウイルスが目に感染(接触感染)することで起こります。
- 白目の充血
- 白くネバネバした目やに
- 目がゴロゴロする(違和感・異物感)
- 涙が出る
- まぶたの腫れ
- 視力低下(ウイルスによる後遺症:点状の角膜混濁)
以上のような目の症状が中心で、プール熱に比べると高熱はなく、喉の赤みや痛みもさほど強くはありません。
ほかの感染を防ぐために抗菌点眼薬や、炎症を抑える目的でステロイド点眼薬が処方される場合もありますが、はやり目に有効な点眼薬はありませんのであくまでも補助的な治療となります。
ウイルス性の結膜炎は、細菌性の結膜炎と比べて症状が重く、流行性角結膜炎は完治に2〜3週間かかることもあります。感染力も強いため、登園を再開するには医師の許可が必要です。一般的には、症状がなくなった2日後が登園できる目安です。
気管支炎・肺炎 – 激しい咳・痰
アデノウイルスに感染し、のどの腫れ(扁桃炎)や痛みをなどの症状がでたあとで、やがて病態が重症化して、気管支炎や肺炎などを引き起こす場合があります。
気管支炎は、気管支の粘膜にウイルス(または細菌)がついて炎症が起こります。
など、風邪症状から徐々に咳が激しくなるのが特徴です。これは肺炎に至る手前の状態とも言えます。
ウイルス(または細菌や微生物)によって、肺にある肺胞に炎症が起こる病態が肺炎です。気管支炎と同じく、発熱や咳の症状が続きます。
アデノウイルスによるウイルス性肺炎と診断された場合、症状が軽ければ症状を和らげる薬などで自宅療養をします。
胃腸炎 – 波がある腹痛・長引く嘔吐下痢
ウイルスが胃腸の中に入り込んで炎症を引き起こします。それによって、胃腸のはたらきが悪くなるため「お腹の風邪」とも呼ばれます。
など、主にお腹の症状が目立ちます。
アデノウイルスによる胃腸炎も、特別に効果のある治療はありません。吐き気・嘔吐、下痢が何日も続くという場合には、その症状に合わせたお薬を処方して、症状を緩和させながら自然に治るのを待ちます。
下痢が続くと、脱水症状が起こることもあるため、こまめな水分補給はとても重要です。症状がひどい場合には点滴を検討することもあります。胃腸を十分に休めながら、症状が回復してきたら、胃腸に負担をかけないものから少しずつ食事を開始して行きます。
オットセイのような咳 – クループ症候群
咽頭に炎症が起こり、それによって声帯が腫れて空気の通り道をふさいでしまった状態の総称を「クループ症候群」といいます。アデノウイルスのほか、インフルエンザウイルスやRSウイルスなど、さまざまな原因ウイルスへの感染によって起こる病気です。
クレープ症候群では、主に咳の症状が出ます。
- 長引く咳
- 息を吸うときに苦しい(吸気性喘鳴)
- 呼吸をすると胸がペコペコとへこむ(陥没呼吸)
など、進行するにつれて声がかすれ、やがて息苦しさを感じるようになります。
咳は、オットセイの鳴き声のような「クオッ、クオッ」または「アウッ、アウッ」という音が特徴的です。
呼吸を楽にするため、ステロイド薬を処方して、喉の炎症を抑える治療を行います。重症なケースでは、入院も必要となる場合があります。