日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会による「鼻アレルギー診療ガイドライン」では、花粉症の対策として以下の方法が挙げられています。
- 花粉を避ける(抗原回避)
- 薬を使った治療(対症療法)
- アレルゲンによる免疫療法(舌下や皮下での治療)
- 手術による治療
- 抗IgE抗体による療法
それぞれわかりやすく解説します。
花粉を避ける(抗原回避)
花粉を避けるためには、以下のような対策が有効です。
- マスクやメガネのような防護具を使って外からの花粉をブロックする。
- 花粉が家の中に入らないよう、衣服に気をつける。
- 外出から戻ったら、洗顔して花粉を落とす。
薬を使った治療(対症療法)
花粉症の薬物治療には、以下が含まれます。
- 抗ヒスタミン効果のある飲み薬
- 鼻の炎症を和らげる点鼻ステロイド
- 鼻づまりを軽減するロイコトリエン受容体拮抗薬
抗ヒスタミン薬には、眠くなりにくいもの、効果の強いもの、鼻づまりや鼻水に特に効くもの、1日に1回の服用で済むもの、貼り薬など、さまざまな種類があります。
花粉症シーズン到来前や、症状がまだ軽いうちに治療を始めることで、症状が悪化するのを防げる「初期治療」が推奨されています。花粉が飛び始める予測日の約2週間前、または花粉症の兆候がわずかでも現れた際に、薬による治療をスタートさせると効果的です。
薬を早期から使用することにより、花粉の量が増える時期でも、症状をうまく管理しやすくなり、快適にシーズンを乗り切ることができます。
アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法、皮下免疫療法)
アレルゲン免疫療法は、アレルギーを引き起こす物質を体内に少しずつ投与し、体の反応を徐々に弱める方法です。この治療法は、注射用の薬と舌の下で溶かすタイプの製剤(舌下錠)があります。日本ではスギ花粉とダニに対する舌下錠が健康保険の対象となっています。
薬物治療による副作用で困っている患者さんや、薬だけでは十分に症状を抑えることができない場合に、アレルゲン免疫療法が選択肢として検討されます。
舌下錠のアレルゲン免疫療法は数年間かけて毎日続ける必要がありますが、医師の処方のもとで適切に服用することで十分な効果を得ることができる治療法です。
手術による治療
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花粉症の症状が非常に重い
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薬物治療で症状が改善されない
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薬の服用を避けたい など
このような場合は手術による治療が検討されます。
下甲介粘膜焼灼術
粘膜の反応を抑えて症状を軽減させることを目的とした手術です。レーザー手術やアルゴンガス凝固術などの方法があり、花粉が飛び始める1~2ヶ月前に行われることが有用とされています。
後鼻神経切断手術
鼻内の後鼻神経は、感覚や鼻水の分泌を担っています。この神経を切断することにより、鼻水の量を減らし、鼻の過敏反応を抑制します。特に症状が重い場合に選択されます。
鼻中隔矯正術・粘膜下下鼻甲介骨切除術
鼻内の構造異常(例えば、鼻中隔が強く曲がっている場合)や、アレルギー性鼻炎などの症状が治らない方に対して行われる手術です。
抗IgE抗体による療法
IgEにスギ花粉が結びつくと、肥満細胞がヒスタミンなどアレルギー反応を引き起こす物質を放出し、それが症状を誘発します。この治療法は、IgEが人体の肥満細胞と結合するのを阻害し、それによってヒスタミンの放出を抑え、アレルギー反応を減少させるものです。
2020年から、重度のスギ花粉症患者さんに向けた抗IgE抗体による皮下注射治療が、健康保険の対象になりました。