まずは一度、耳鼻咽喉科で症状から疑われる病気の検査を受けましょう。
喉の専門は耳鼻咽喉科です。症状から疑われる病気の検査を受けましょう。その上で病気が見つからなければ、精神的または肉体的の負担が大きく、心身のバランスが乱れているサインとして、ヒステリー球の症状が出ていることも考えられます。必要に応じて、心療内科や精神科での治療を検討しましょう。
喉(のど)の違和感・異物感・痛みなど、その症状の背景には風邪やインフルエンザ、アレルギーなど体の不調が原因となって起こっている可能性が考えられます。
一方、とくに体調を崩しているわけではないのに、「喉が痛い」「違和感・異物感がある」という場合があります。耳鼻咽喉科で喉の検査をしても、症状の原因となる異常は何も見つかりません。
このように、喉に痛みや違和感・異物感など覚える状態を咽喉頭異常感症(読み方:いんこうとういじょうかんしょう)、またはヒステリー球といいます。
本記事では、咽喉頭異常感症(ヒステリー球)を診療する医師に監修していただき、喉の違和感・異物感とその原因を解説しています。
目次
喉(のど)に起こりやすい症状には、風邪などによる喉の痛みをはじめ、声枯れや咳(せき)、痰などのさまざまな症状があげられます。
これらのケースでは、喉や気管支などの臓器そのものに、症状がでる要因となる何らかの異常がみられます。たとえば「唾を飲み込んだときに痛みを感じる」などの症状は、喉に炎症が起きている可能性が高いです。
一方で、とくに体調を崩しているわけではないのに、喉の違和感・異物感に悩まされる方がいらっしゃいます。この場合、耳鼻咽喉科で喉の検査をしても、症状の原因となる喉の異常は何も見つかりません。
このように、喉の異常感が続くにもにもかかわらず、適切な検査を受けても原因が特定できない状態を咽喉頭異常感症といいます。
喉の痛みや異物感が続く場合は、身体に何らかの異変が起こっていることが考えられるので、まずは耳鼻咽喉科やかかりつけの内科で一度検査を受けるようにしましょう。
咽喉頭異常感症と呼ばれる状態は、その発症原因から大きく2つの種類に分けられます。
その分類のポイントとなるのは、「症状に見合った身体的な異常があるか」という点です。
喉に異常感の訴えがあるにもかかわらず、耳鼻咽喉科で通常の検査をしても、訴えに見合うだけの異常が認められない場合をヒステリー球(真性咽喉頭異常感症)といいます。
ヒステリー球は、精神的な問題や自律神経の乱れが主な原因として考えられています。
喉の異常感・不快感の訴えは患者さんによって異なりますが、
などがあります。
喉や胃(胸)の不調を訴えて、耳鼻咽喉科や内科を受診した方の4~5割は、その原因が不明と診断されるケースがあるといわれています。そのなかに、このヒステリー球の方が該当すると考えられています。
ヒステリー球の疑いが高い場合は、心療内科や精神科での治療を推奨する場合が多いです。
喉の異常感が、身体の局所的あるいは全身の病的な要因によって起こるものを、症候性咽頭異常感症といいます。
たとえば、
など、喉をはじめ食道・胃などの消化器官に病変がある場合です。
中には貧血や糖尿病など全身的な疾患によって、喉に異常感を覚える方もいらっしゃいます。
咽喉頭異常感症はあくまでも1つの症候名にすぎません。経過をみていく中で、後日振り返るとさまざまな原因疾患が発見されるということもあります。
いずれにしても、喉に違和感・異物感を覚えたら、その原因として身体に何らかの病気が隠れていないかを検査することが重要です。
たとえ喉に違和感・異物感を覚えていても、ストレスを感じることなく、日常生活への影響もない場合は治療する必要はありません。
しかし、喉の違和感や異物感がストレスが溜まっているというサインである可能性も考えられます。普段の生活の中で、心や身体のダメージを感じることがないか振り返ってみましょう。
また、症状の原因が特定できず
など、日常生活に支障をきたしている場合は、そのままにしておくことはお勧めできません。
症状が続いていることから「実は重い病気が隠れているのではないか」と不安になってしまったり、症状に気をとられることが多くなったり、原因の特定や効果のある治療法を求めてドクターショッピングをし続けているという方は少なくありません。
症状によって普段の生活やメンタル面に支障が起こっている場合はヒステリー球の可能性が高いため、それに応じた治療が必要となります。
適切な治療を受けることにより、ヒステリー球はほとんどの場合で改善が見込める病気です。心療内科や精神科の受診でよくなることも多いので、一度受診を検討してみましょう。
咽喉頭異常感症(ヒステリー球)は、主にストレスを感じたり、精神的に不安定になったりすることで喉から胸あたりに違和感・異物感・圧迫感などを覚える病気です。
「のどに球のようなものが詰まっているようで苦しい」と感じる人も多いといわれています。更年期(40代~50代)の女性に多い病気ですが、性別や年齢関係なく身体的・肉体的ストレスを感じやすい人が発症しやすいともいわれています。
ただし、中にはのどに腫瘍などができていて、それが詰まっていて苦しいという人もいるため、異物感を覚えたらまずは耳鼻咽喉科や内科でかかっている可能性のある病気の検査を受けるようにしましょう。
検査した結果、はっきりと症状があるにもかかわらず、特に異常がないとされることもあります。検査結果に異常はなくとも、症状が続いていて苦しい、症状がどんどんひどくなっている、症状が気になって集中力が低下している、症状のせいで不安になり、抑うつ状態になったりしている。原因や治療法を知りたくていろんな病院を受診しても答えが出ず、処方された薬を飲んでも症状が消えないという場合も珍しくありません。
その場合、何らかの理由によって心や体に大きな負担がかかっており、心身のバランスが崩れている可能性も考えられ、心療内科や精神科での治療によって改善することもあります。
喉の違和感・異物感は身体的な症状のひとつといえます。そのため、多くの人は「体のどこかに何らかの原因があるのではないか」と考えますが、ストレスなど精神的な影響から自律神経・ホルモンのバランスが乱れてしまい、喉の違和感・異物感などさまざまな身体症状につながることもよくあります。ゆえに、ヒステリー球が自律神経失調症や更年期障害、軽症うつ病・不安障害・ストレス性障害などの症状のひとつとしてあらわれることも多いのです。
人間の身体は、転居・転勤、家族や友人との死別、職場などでのハラスメント、近所の騒音トラブルなどで強いストレスを感じると、自律神経のバランスが乱れ、交感神経の働きが強まっていきます。すると、喉の筋肉が過剰に収縮してしまい、食道に違和感が生じ、ヒステリー球の症状である喉の違和感・異物感を覚えるようになります。こうしたメカニズムにより、ヒステリー球の症状は不安感、嫌悪感、不快感、疲労、緊張を強く覚えたときに、症状が強くなる傾向があります。
この病気は月経、妊娠・出産、更年期でホルモンバランスが乱れがちな女性のほうが発症する人が多いといわれますが、心配性、生真面目、我慢強い、責任感が強い、ストレスを溜めてしまう、不安になりやすいといった特徴のいずれかに当てはまる場合もかかりやすい傾向があります。
喉の違和感・異物感を感じる場合、その背景には何らかの病気が関連していることがあります。
喉の異変には咽頭がんや食道がんなどの病気が隠れていることもありますが、自覚症状として喉に違和感を覚えたときには、すでに「がん」が進行していたということも少なくありません。
これらのがんは初期症状がほとんどなく、初期段階で発見するのは難しいといわれています。
いずれにせよ、喉の違和感や異物感があったら、早めに受診することをおすすめします。
など
など
など
喉(のど)に違和感・異物感がある場合、その原因を明らかにするための検査を行います。
治療前の検査では、喉頭ファイバー(内視鏡)を使って喉に異常がないかどうか調べます。症状によっては副鼻腔や頸部のCT検査・超音波検査、頸部レントゲン検査、上部消化管内視鏡などで、腫瘍の有無などを確認することもあります。
喉の違和感・異物感のみならず、首の腫れがみられる場合は甲状腺ホルモンの検査や、全身状態をチェックするための血液検査を行うこともあります。
検査によって病気が見つかった場合はその病気に合わせた治療を行い、とくに異常がない(病気が見当たらない)場合は、咽喉頭異常感症(ヒステリー球)と診断し、適切な治療を行います。
咽喉頭異常感症(ヒステリー球)を治すには、症状があらわれる理由や経緯を明らかにすることが大切です。
治療法を決めていくために、まずは心理テスト等を含めた問診を実施します。
問診では、
などをあげてもらいます。その回答から、どのような治療が効果的なのか判断していきます。
ヒステリー球の治療では、心身の両方にアプローチし、自律神経のバランスを整えて症状を軽減させていくことが目的です。そのために、症状に合わせた投薬治療とともに、症状を引き起こす原因になるストレスへの対処や、生活習慣の改善、思考のクセの改善などを行います。不安や緊張に対するリラクセーション法なども効果的です。
投薬治療では症状に合わせて、漢方薬、抗うつ剤、抗不安薬(精神安定剤)、睡眠薬などが使われます。
軽度の場合や、心の症状よりも身体の症状がつらい場合は漢方薬を使います。症状が続くことにより、不眠、不安感、うつ状態、症状が気になって日常生活に支障が出る状態になることも多いため、抗うつ剤や抗不安薬、睡眠薬を処方します。
ヒステリー球でよく使われる漢方薬は、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)です。気うつを改善する代表的な漢方薬で、精神的な症状と身体的な症状の両方の改善が期待でき、ヒステリー球の症状を緩和させる効果が期待されます。
おだやかな抗うつ作用、鎮静作用があるので、不安感が強い状態やうつ状態を改善し、精神の安定につながります。さらに、吐き気止めや咳止め、胃の調子を整える作用などもあるため、のどの詰まりによって吐き気を感じる、食欲が低下しているという人にも効果的です。
ただし、漢方は体質によって相性の良し悪しがあり、他の薬との飲み合わせに注意する必要があります。また、西洋薬のように即効性が期待できず、効果も個人差が大きい上、効果が感じられるまでに2週間~2カ月程度かかることも。そのため、症状がひどい場合や即効性を求めている場合は西洋薬が向いています。
よって、漢方は比較的症状が軽い場合、精神的な症状よりも身体の症状が気になる場合、症状が落ち着いてきたので西洋薬を減らしたい場合、副作用や飲み合わせなどで西洋薬が飲めない場合などにおすすめです。
ヒステリー球になる人は、ストレスを感じやすい考え方や性質を持っている傾向があります。ゆえに、投薬療法以外にも認知行動療法などの心理療法を行なってストレスへの対処法を身に付けたり、物事に対する考え方や葛藤との向き合い方を見つめ直したりすることで、症状が落ち着いていくこともあります。
心理療法は患者さんの症状に合わせてさまざまな種類があり、認知行動療法、カウンセリング、対人関係療法、森田療法などがよく用いられています。
心理療法を行う場合、基本的には医師ではなく臨床心理士が担当し、保険適用外となります。ただ、通院時間の都合や費用面で臨床心理士による心理療法が難しい場合でも、医師による診察範囲内の治療で改善を目指すことができます。
まずは一度、耳鼻咽喉科で症状から疑われる病気の検査を受けましょう。
喉の専門は耳鼻咽喉科です。症状から疑われる病気の検査を受けましょう。その上で病気が見つからなければ、精神的または肉体的の負担が大きく、心身のバランスが乱れているサインとして、ヒステリー球の症状が出ていることも考えられます。必要に応じて、心療内科や精神科での治療を検討しましょう。
喉頭がんの症状は以下の通りです。
これらのうち、1つでも当てはまる症状がある場合は耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
また、喫煙と飲酒は喉頭がんの発生リスクとの関連があります。喫煙や飲酒の習慣がある場合は喉頭がんのリスクが高いので、年に一度は耳鼻咽喉科で検査することをおすすめします。
喉の筋肉が緊張することが原因です。
自律神経失調症の場合、自律神経の交感神経が過剰に働き、喉の筋肉が緊張することによって喉のつまり感が起こります。交感神経が優位になると筋肉は緊張しやすく、副交感神経が優位になると筋肉は緩みやすくなるというメカニズムがあるため、交感神経が優位になると喉の筋肉も緊張して飲み込みづらくなり、喉が詰まるような違和感を覚えるようになります。
食道がんの初期症状はほとんどありません。
食道がんは初期症状に乏しく、早期発見された場合は検診や人間ドックで内視鏡検査や上部消化管造影検査(バリウム食道透視検査)を行い、偶然に見つかったというケースがほとんどです。自覚症状を覚えたときにはすでに進行しているケースが少なくありません。
進行すると、飲食時の胸の違和感、飲食物がつかえるような感覚、体重減少、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状があらわれます。
初期症状として喉の奥の違和感を覚えるようになります。
喉のポリープができた場合、初期症状として喉の奥の違和感を覚えるようになります。喉の奥になにか詰まったようなイガイガした感覚が続き、うがいなどをしてもスッキリしません。
進行すると声がかれる・かすれ声になる嗄声(させい)がみられるほか、話していると空気が漏れるような声になったり、話している途中で声が続かなくなったり、唾液などを飲み込む時にしみるような痛みを感じたりすることもあります。
まれではあるものの、ポリープが大きくなった場合は呼吸困難につながることもあるので注意が必要です。
ちば耳鼻咽喉科クリニック千葉 隆史 先生
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