疥癬はアルコール消毒では死滅しません。
疥癬とは?感染確率と放置するデメリット、湿疹症状を画像でわかりやすく解説
本記事は、ダニの一種である「ヒゼンダニ」によって感染する皮膚の病気、疥癬(かいせん)について書いています。
疥癬は同じく皮膚の病気である乾癬(かんせん)と漢字や読み方が似ていますが、全く別の皮膚疾患であり、その原因や症状、もちろん治療法も異なります。混在しないように注意しましょう。
本記事では、疥癬の診療にあたる医師に監修していただき、ヒゼンダニに感染することで起こる症状や、感染を放置するデメリットをわかりやすく解説しています。
皮膚疾患にはさまざまな病態がありますが、疥癬は人にうつることはあるのか?その感染経路は?など、皮膚疾患ならではの気になる情報も併せてご紹介します。
目次
疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生する病気
ダニの中には皮膚病の原因となる種類がいくつか存在します。
その中で、ヒゼンダニ(疥癬虫:かいせんちゅう)という、とても小さなダニが皮膚に寄生してかゆみを引き起こす感染症が疥癬(かいせん)です。
ヒゼンダニの写真
ヒゼンダニは人の肌を好んで生息する生物で、その大きさは1mm以下、直接私たちの目では確認が困難なとても小さなサイズが特徴的です。
生きるためにもっとも適温なのは人の体温であるため、人の肌から離れると長くは生きられません。そのため、成虫になったメスはオスと交尾をした後、人の皮膚に卵を産み付けようと試みます。
ヒゼンダニの卵は3~4日でかえり、やがて幼虫になります。そして、成虫になるまでは10~14日間かかります。
人の肌で快適に過ごすことができるヒゼンダニですが、一方で高熱や乾燥に弱いという特徴をもちます。50℃以上の環境に10分以上さらされると、ヒゼンダニは死滅することがわかっています。
疥癬トンネルとは?画像でわかりやすく解説
ヒゼンダニは人の肌に卵を産む際、皮膚にトンネルのようなものを作って、その穴に卵を産みつけます。これを疥癬トンネルといいます。
疥癬トンネルの幅は約0.4mm、長さは最長で5mm程度です。トンネルの天井にあたる部分は等間隔に約0.2mmの穴があいており、先端部には産卵中のメスの成虫が潜んでいます。ヒゼンダニは、これらの体のパーツの角質層内に体を潜り込ませ、卵や糞便を残しながら水平に掘り進めていきます。こうしてヒゼンダニが掘り進めた跡は、細く曲がりくねった線状のようになっています。
疥癬トンネルが作られやすい箇所は、手のひらや指の間、肘、手首や足首、わきの下、外陰部などです。寝たきりの高齢者や乳幼児の場合は、足などに疥癬トンネルがみられることもあります。
疥癬は自然に治る?
疥癬は状態によって自然治癒することもありますが、湿疹になったり、家族など周りの人に感染させてしまったりするリスクがあります。
疥癬かもしれないと思ったら、早めに受診して治療するようにしましょう。
疥癬(かいせん)はうつる病気? - 種類と感染経路
疥癬はうつる病気です。基本的に感染者の肌と他の人の肌が触れることで感染します。
疥癬は、通常疥癬(つうじょうかいせん)と、感染力が強い角化型疥癬(かくかがたかいせん)の2つに分かれます。
いずれもヒゼンダニが原因ですが、ヒゼンダニの寄生数に圧倒的な違いがあることから、感染力(感染する確率)や感染対策なども異なります。
いずれの場合でも、生活を共にしている家族間での感染がもっとも多く、それ以外のケースでは一部、性行為感染症として感染するケースもみられます。
通常疥癬 | 角化型疥癬 | |
---|---|---|
ヒゼンダニの数 | 数十匹以下 | 100万~200万匹 |
患者さんの免疫力 | 正常でも感染 | 低下している際に 感染しやすい |
感染力 | 弱い | 強い 感染する確率が高い |
主な症状 | 丘診、結節 | 角質増殖 |
かゆみ | 強い | 不定 |
症状が出る部位 | 顔や頭を除く全身 | 全身 |
通常疥癬は、他人の肌や手と長時間、直接触れて、そこからダニが移動することによって感染します。短時間の接触で感染することはほとんどありませんので、比較的感染力は弱いといえます。
まれなケースではありますが、通常疥癬の患者さんが使用した寝具や衣類などを、すぐ他の人が使用したことで感染した例も報告されています。
感染する確率が高い角化型疥癬(ノルウェー疥癬)
角化型疥癬(ノルウェー疥癬)は、ダニの寄生数が多いことから感染力がとても強い(感染する確率が高い)のが特徴です。感染者との短時間の接触、衣類や寝具の共用といった間接的な接触などでも感染のリスクが大きいといわれています。
さらに、感染者の角質にも大量のダニが潜んでいるため、それが剥がれ落ちて他の人についてしまうことでも感染します。 角化型疥癬の患者さんから感染した場合は潜伏期間が短く、感染から4~5日後に発症するケースもあります。
このように、ヒゼンダニが肌に寄生して疥癬にかかった場合、疥癬の種類によって症状の出方が違います。
通常疥癬の潜伏期間・湿疹症状
通常疥癬は感染してから症状が出るまで、1~2か月の潜伏期間があります。
いずれも皮膚に紅色から紅褐色のブツブツした湿疹がみられるようになります。通常疥癬はかなりかゆみが強いのが特徴で、なかには夜も眠れないほどの猛烈なかゆみを感じる方もいらっしゃいます。角化型疥癬はかゆみが強かったり弱かったりと、比較的不安定です。
外陰部や脇の下にヒゼンダニが寄生した場合は、疥癬特有の硬さのあるブツブツとした湿疹が発生します。また、手や指、手首に寄生した場合は、線状に盛り上がった皮疹(疥癬トンネル)が、直接目でも確認できることがあります。
通常疥癬の場合、ヒゼンダニの寄生数は5匹以下で、患者さんの半数はこのパターンです。
赤みのあるブツブツは、お腹や胸、脚や腕などに多く発生する傾向があり、夜になるにつれてかゆみが強くなりやすいといわれています。男性の場合、外陰部に数ミリ程度のしこりのような湿疹ができることもあります。
一方で、角化型疥癬の患者さんから感染した場合は潜伏期間が短く、感染から4~5日後に発症するケースもあります。
角化型疥癬の場合、100万~200万匹ものヒゼンダニが皮膚に寄生し、強い感染力があります。
患者さんの免疫力が低下している状態で感染することが多い傾向にあります。湿疹が出るというよりも、垢が増えたような見た目になるのが通常回線との違いです。
手や脚、お尻や肘、膝、爪に、ザラザラとした灰色から黄白色の垢が厚く蓄積したように見えます。手のひらや脚のみなど、一部分だけに症状が出ることもあり、人によってはまったくかゆみを感じない場合もあります。
疥癬は、かかり始めのうちに正確に診断するのは難しく、単なる湿疹などと診断され、適切な治療ができない例も珍しくありません。
また、ステロイド外用では効果がなく、むしろステロイド外用によって悪化してしまい、通常疥癬だったはずが角化型疥癬を引き起こす原因になることもあります。
疥癬はどこがかゆくなる?
わきの下や胸部、おへそを中心としたお腹部分、性器の周辺、太ももなどに発生しやすく、強いかゆみを感じるようになります。寝たきりの高齢者や乳幼児の場合は足などにも湿疹が出ることがあります。
疥癬の症状を放置するリスク・デメリット
疥癬を単なる肌荒れや湿疹だと思って放置すると、
- 不快なかゆみが続く
- 皮膚の角化(皮膚の表面が硬くなる)が進む
- 赤みのある腫れが続く
- 肌疾患が慢性化して肌の色が黒くなる(色素沈着していく)
- 人にうつしてしまう。
以上のようなリスク・デメリットがあります。
なるべく早めに受診して適切な治療を受けましょう。
疥癬(かいせん)の感染予防対策
家族などが疥癬にかかってしまった場合、基本的な感染予防対策としては、手をしっかり洗うことや、感染している家族と長時間肌と肌の接触をしないことが重要です。
通常疥癬であれば感染力があまり高くないため、過剰な対策は不要であるとも考えられていますが、タオルなどの共用はさけて、患者さんと同じ部屋で寝ることも避けることが望ましいと考えます。
感染力が強い角化型疥癬の場合は、患者さんに触れるときには手袋をして、長袖・長ズボンなどを着て肌が極力露出しないよう対策しましょう。 患者さんの部屋に入る際には、部屋床に接触する靴やスリッパ、靴下などを履き替えることも重要です。
治療開始時と終了時に、患者さんの部屋に殺虫剤をスプレーするのも忘れないようにしてください。ヒゼンダニは50℃以上の環境に10分以上さらされると死滅します。そのため、患者さんの洗濯物を50℃以上のお湯に10分以上浸してから洗濯する、または乾燥機を使うことも効果的です。
患者さん本人も、周囲の人にうつさないよう注意する必要があります。
通常疥癬の場合は、入浴時に手足の指や外陰部まで丁寧に洗う、タオルなどを誰かと共用しない、パジャマや下着などは毎日交換する、感染リスクがある雑魚寝を避けるなどの対策をとりましょう。
角化型疥癬の場合は、基本的に個室で隔離するようにし、滞在した部屋はモップや粘着シートなどで掃除した後、掃除機をしっかりかけましょう。 入浴は、家族などが済ませた後に最後に入るようにし、厚くなった垢をこすり落とすようにしながら体を洗いましょう。
疥癬(かいせん)の診断方法
顕微鏡検査やダーモスコピー検査を行い、皮膚にヒゼンダニの虫体や卵が見つかれば、疥癬の診断が確定します。
顕微鏡検査の場合、ピンセットやハサミを使って症状が出ている部位の皮膚を少しだけ切り取り、顕微鏡で観察します。
ダーモスコピー検査では、ダーモスコープという皮膚を観察できる特殊な皮膚拡大鏡で皮膚を直接診てヒゼンダニがいないか確認します。
疥癬は血液検査などで診断することができないこともあり、たとえ皮膚科専門医でもヒゼンダニを見つけることが難しい場合もあります。
そのため、疥癬を疑う場合は皮膚の状態に加えて、疥癬にかかっている患者さんとの接触の有無、ヒゼンダニが角質内を掘り進めた証拠となる疥癬トンネルの有無などで総合的に診断していきます。
疥癬(かいせん)の治し方
疥癬はどれくらいでなおる?
疥癬に関するよくあるご質問
疥癬にアルコール消毒は有効ですか?
疥癬の性行為感染は?
準備中
赤いブツブツは疥癬ですか?
準備中
ヒゼンダニはどこに生息?
準備中
こちらの記事の監修医師
前田皮膚科クリニック前田 文彦 先生
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