はい、再発する可能性はあります。
ガングリオンを吸引療法によって摘出する場合は、ガングリオンの茎や袋は残ったままの状態です。そのため、再発のリスクは残ります。
再発を未然に防ぐためには、外科的手術によって関節包や腱鞘につながっている茎を含めて、丸ごとガングリオンを摘出することが必要です。
手首の周辺の甲側(手の甲)に、こぶのような腫れ物ができて、気になっている方はいらっしゃらないでしょうか。もしかするとそれは、ガングリオンとよばれる疾患かもしれません。
腫れ物の特徴としては、大きさは米粒大からピンポン玉大までいろいろとあり、中にはゼリー上の物質が詰まっています。ぷにぷにと柔らかいものから硬くなった状態のものまでさまざまです。
腫れ物ができると不安になるのが、悪性の腫瘍ではないか?自然治癒するのか?という点です。
本記事では、医師に監修していただき、ガングリオンの具体的な症状と原因、治療法を解説しています。
目次
ガングリオンとは、主に手関節などにできる腫瘤(しゅりゅう)で、「こぶ」のような形状が特徴的です。
腫れ物ができると「悪性の腫瘍ではないか?」と不安になる方が多いですが、ガングリオンは「がん」とは違い、悪性のものではありません。
この腫瘤はガングリオン嚢胞(のうほう)ともよばれます。嚢胞とは分泌物が袋状に溜まった状態をいい、英語ではGanglion Cyst(ガングリオン シスト)と表記します。このCyst(シスト)が嚢胞という意味です。
私たちの体にある関節には、関節包(かんせつほう)や髄鞘(ずいしょう)とよばれるものが存在します。
関節包には関節部分で骨をつなぎ止めている靱帯で、その内部には関節の動きを滑らかにする滑液が分泌されています。一方、髄鞘は手首や足首の腱の回りを包み込んでいる鞘状の組織です。この中にも滑液が分泌されています。
これらの組織があるために指や手足の関節がスムーズに動きます。ガングリオンは、この関節包や髄鞘がある関節に発症します。
ガングリオンはそのまま放置しておいても、自然に消失して治癒することも多い疾患です。そのため、ガングリオンと診断された場合、痛みや違和感などの症状がみられない場合は、経過観察で問題ありません。
一方で、痛み等の症状がなくとも、手首などの目立つところがぷっくりと腫れるため、「見た目が気になってしまって・・・」と悩まれている方も少なくありません。
腫瘤が大きくて外見が気になりはじめたら、症状なくとも治療して除去することをおすすめします。
ガングリオンの中には、手の甲の奥の方に発生する腫瘤があります。あまりサイズが大きくなく、表層からははっきりと分からないものをオカルトガングリオン(Occult ganglion)といいます。
見た目や触診では判断がつかないため、MRI検査や超音波検査などの画像診断をおこなって初めて、ガングリオンだと分かることがあります。
ガングリオンはとくに20〜40歳代の方、比較的、男性よりも女性に好発するケースが多いとされています。
ガングリオンの発症原因は明確にわかっていませんが、関節包が変性して突出したところに、関節や髄鞘から漏れ出した滑液が流れ込んで、良性の腫瘤(※ 袋状のこぶ)が生成されると考えられています。
手の疾患は手の酷使によって発症するものも多いですが、ガングリオンに関しては必ずしも、手をよく使う人に多く発症するというわけではありません。
※ 腫瘍(しゅよう)とは違います。文字は似ていますが、腫瘍は細胞が異常に増殖して塊になったものです。
ガングリオンの症状としては、「こぶのような腫瘤」が特徴的です。腫瘤の大きさは米粒大からピンポン玉大までさまざまです。
この腫瘤の中には、ゼリー状の内容物が詰まっています。内容物は柔らかいものから、線維化して硬くなったものがあります。硬い塊が出てきたケースでは、「骨が出てきた、骨が変形してしまった」と慌てて受診される患者さんもいらっしゃいます。
ガングリオンを発症すると、痛みやしびれの症状を感じることもあります。
腫瘤そのものに痛みなどはありませんが、腫瘤の発症場所や大きさによっては、近くを通っている神経を圧迫したり、刺激をしてしまう可能性があるためです。
ガングリオンは、手関節や指の付け根、手の甲側にできるものが多いです。特に手首の甲にできるケースは70%以上と、圧倒的に多くなっています。
手にガングリオンができると、
など
感覚異常や運動麻痺の症状が現れることがあります。また、ガングリオンが腱を圧迫している場合には、痛みを感じやすくなります。
ガングリオンができてしまった際に、手を使い過ぎると、腫瘤が大きくなることもありますので注意が必要です。
ガングリオンは身体のあらゆる場所にできる腫瘤であり、膝の関節やくるぶし付近など脚(足)にもできる可能性はあります。しかし、発症率は全体の10%程度と比較的少ないです。
神経や腱を圧迫してしびれや痛みを伴い、日常生活に支障をきたしてしまう場合があります。 痛みやしびれなどの感覚麻痺や、動かしにくいという運動麻痺を起こしているようなケースは、早めに適切な処置をすることが大切です。
一方で、外側から触れられないほど小さな腫瘤の場合、触知できないケースもあります。そのようなケースでは、MRI検査や超音波検査をによって内容物の状態を調べていきます。
ガングリオンと診断されても、日常生活に支障をきたさない程度の状態であれば、経過観察となる場合が多いです。しかし、腫瘤が大きくなるようだったり、痛みが強かったりするようなケースでは、ガングリオンを摘出する治療を検討します。
治療法としては、
などがあげられます。
一般的な保存的治療として選択されるのは、皮下注射器による吸引療法です。数回程度の吸引で完治します。
再発する場合は、ガングリオンの状態にもよりますが、外科的手術を検討する場合が多いです。
内容物をそのまま取り除く吸引療法や外科的手術の場合は、すぐに腫瘤はなくなり、数日程度で症状も改善します。経過観察となり治療をしなかった場合でも、数ヶ月~数年で自然に治ることもあります。
はい、再発する可能性はあります。
ガングリオンを吸引療法によって摘出する場合は、ガングリオンの茎や袋は残ったままの状態です。そのため、再発のリスクは残ります。
再発を未然に防ぐためには、外科的手術によって関節包や腱鞘につながっている茎を含めて、丸ごとガングリオンを摘出することが必要です。
ガングリオンは、関節液や滑液が濃縮されたものです。
ガングリオンは、関節包内に入っている関節液や滑液が濃縮されたもので、主成分はヒアルロン酸です。淡く黄色いゼリー状であることが特徴です。
ガングリオンは小さなお子さんから高齢者まで幅広い年代で見られる疾患ですが、とくに20~50歳の年齢層に多いとされています。
10歳以下の小児でも発症しますが、確率は低いです。
ガングリオンは小児でも発生する疾患ですが、日本小児整形外科学会の報告によると「10歳以下の小児に発生するのは約2%程度」とかなり低い確率となっています。
治療の方法によっては、治療時と治療後に治るまでの過程で痛みを伴う場合があります。
皮下注射によって行う吸引療法の場合、注射と同等の痛みを伴います。傷の大きさも注射と同じなので、痕が残ることはありません。 外科的手術によって除去する場合、手術は局所麻酔によって実施されますので痛みはありません。手術を終えてから2ヶ月程度は、傷口に物が触れると痛みを感じることもあります。しかし、日ごとに痛みは和らいでいきますので過度な心配は入りません。
約10分程度の処置で終了します。
局所麻酔を行い、約10分程度の処置で終了します。比較的、体には負担がかからない手術です。
ガングリオンの治療は、健康保険が適応できます。
患者さんの自己負担額のみのお支払いとなります。
吸引療法や外科手術など処置の内容によって変わります。
吸引療法による治療は、おおよそ1回1,000円程度で行うことが多いです。外科的手術のケースは、日帰り手術であれば3万円程度となります。いずれの場合も、別途、診察料・検査費をはじめ、薬代などもかかります。また、処置の内容によっても変わる場合があります。
同じ良性腫瘍ですが、生成される内容物が異なります。
粉瘤は、垢や皮脂などの老廃物がたまった良性腫瘍です。ガングリオンと同様に袋状で徐々に大きくなる傾向はありますが、まったく異なる内容物に分類されます。 ガングリオンは関節の周辺に発症するという特徴があり、腫瘤ができた場所である程度の区別ができます。 しかし、関節部分に粉瘤ができないわけではありません。自己判断せずに、医療機関を受診して適切な診断が必要です。
癌になることはありません。
ガングリオンは良性の腫瘤で、ガンのような悪性の腫瘍とは異なります。周りの組織に転移することはありませんので、癌になることはありません。
こばやし整形外科クリニック小林 義尊 先生
宮城県名取市「こばやし整形外科クリニック」、院長の小林です。
大学卒業後12年間福島にて、その後8年間仙南地区と仙台市内において整形外科およびサブスペシャリティである手外科診療を行ってまいりました。
医師を前にすると、話しにくかったり聞きづらかったりした経験がおありの方が少なからずいらっしゃるかと思います。話しやすい環境を整え、できる限り患者様のご期待にお応えしたいと考えています。
また、得意とする手外科診療だけでなく、リハビリテーションなども含めた総合的な整形外科診療を行ってまいります。
宮城県内で手外科をお探しの方は、当院へご相談ください。何卒よろしくお願い申し上げます。
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