最終更新日:2022.12.14 | 投稿日:2022.12.09

高血圧とは?判定基準と原因、血圧が高いと出る症状を解説

高血圧とは?判定基準と原因、血圧が高いと出る症状を解説

現在、日本の高血圧患者数は約4300万人いると推定されています。これは、日本人の3人に1人が高血圧という状況です。

一方、年に一回の健康診断などで血圧を測定し、医師から少し血圧が高めですね、と指摘を受けても、積極的に治療を行わない方が多いという点が問題視されています。

治療せずに高血圧を放置してしまうことよって、体にはどのような影響を及ぼすのでしょうか。

今回は、高血圧の診療を行う医師に監修していただき、高血圧の判定基準とその原因、血圧が高いことで引き起こす症状を解説していただきました。

目次

高血圧とは

人が生きていくためのエネルギーを維持するためには、体の中のあらゆる細胞に酸素と栄養を送り届けなければなりません。また、その供給だけではなく、老廃物などの不要な物質の回収も大切です。

体にとって必要な物質の配達、そして不要物の回収をしているのが血液です。そして、その血液の通り道が血管、その動力となるのが血圧です。

血圧が高い状態が続くと危険な理由

高血圧の診断基準(新基準)

140~159/90~99mmHg(I度高血圧)

160~179/100~109mmHg(II度高血圧)

180~/110~mmHg(III度高血圧)

高血圧によって起こる合併症(臓器障害)のリスク

高血圧を引き起こす合併症としては、以下が挙げられます。

・脳出血
・くも膜下出血
・脳梗塞
・心肥大
・狭心症
・心筋梗塞
・腎硬化症
・腎不全
・大動脈瘤
・大動脈剥離
・閉鎖性動脈硬化症
・高血圧性網膜症

中でも、高血圧にもっとも深いかかわりがあるのが脳出血です。脳出血にはいくつか種類がありますが、その中の8割を占めるのが、慢性的な高血圧が原因で起こる「高血圧性脳出血」です。
高血圧が続くことで動脈に強い圧力がかかっぱなしになり、血管壁がもろくなって弾力性が失われます(動脈硬化)。こうなると、脳出血が起こりやすくなってしまうのです。

血圧が正常高値でも注意が必要なケース

メタボリックシンドローム

慢性腎臓病

高血圧によって発症リスクが高まる腎臓病の一つに、腎硬化症があります。多くの血管が密集して集合体となっている腎臓は、その分、動脈硬化の影響を受けやすくなります。

腎臓は毛細血管というとても細い血管が集まっています。細い血管ぎ硬くもろくなると、その分流れ込む血液の量は減少します。

腎臓には心臓から送り出される血液の4分の1ほどの量が流れ込むと言われています。それが減ってしまうと、腎臓は萎縮して硬くなってしまいます。

腎臓の動脈硬化が進行すると、やがて腎臓の機能は著しく低下して、本来の機能を取り戻すことはできなくなります。この状態を、腎不全といいます。

心血管疾患

高血圧のセルフチェック

朝起きたときにまだ疲れが残っている
いびきがうるさい、または睡眠時無呼吸症候群と言われた
歯周病を治療していない
首や肩がいつもこっている
くよくよと思い悩むタイプだ
味付けの濃いものが好きでよく食べる
常に運動不足だ
喫煙している
最近、イライラして怒りっぽくなった
血圧を健康診断以外で測ったことがない
インスタント食品やスナック菓子をほぼ毎日食べている
以前に比べて、足がよくつる
1日1時間以上のデスクワークをする
生野菜や果物はほとんど食べない
お酒はほとんど毎日飲んでいる
短気でカッとなることが多い
スマホを1日1時間以上集中して使っている
以前より太ったといわれる
常にご飯は満腹になるまで食べてしまう
最近、計算のスピードが落ちたように感じる
どちらかというと負けず嫌いだ
緊張する会議が1週間に1〜2回ある
ラ行とパ行をスムーズに3回繰り返し言えない
エナジードリンクや栄養ドリンクをよく飲む

高血圧の症状

高血圧の特徴は、はっきりとした自覚症状が現れないことです。初期に頭痛、頭重感、めまい、耳鳴り、肩こりなどを感じることもありますが、これらは高血圧特有の症状ではないため、風邪などの症状だとして見過ごしてしまうことも少なくありません。ただし、高血圧が進んだ場合、動悸、呼吸困難、息切れなどの症状が現れることがあります。高血圧は症状でチェックするのが難しい病気なので、病院や家庭で定期的に血圧測定をすることが大切です。

高血圧の初期症状

高血圧によって動脈硬化が進むと

高血圧の原因(血圧が上がる理由)

ひとくちに高血圧といっても、その原因はさまざまです。医学的に、高血圧はその原因によって大きく2つのタイプに分類されます。

まずは自分がどのタイプに当てはまるのかを知ることが大切です。

本態性高血圧と二次性高血圧

遺伝子の異常や明確な原因が特定できない高血圧を、本能性高血圧(もしくは一次高血圧)といいます。高血圧の方の約80〜90%が、このタイプの高血圧に該当します。

本能性高血圧は遺伝病ではありませんが、遺伝的要因が関与していることは知られています。

もちろん、遺伝的因子があった場合、すべての方が高血圧になるわけではありません。日々の生活習慣による環境要因が加わることで、発症リスクが高まると推測されています。

そのため、生活習慣を正すことで症状が改善することが多いです。

一方、腎臓病やホルモンの病気など、なんらかの病気が引き金となって起こる高血圧を、二次性高血圧といいます。

このタイプの高血圧は、原因となる病気を根本的に治さなければ、改善することは困難です。

二次性高血圧は主に4つに分けられます。

・腎実質性高血圧(腎性高血圧)
糸球体腎炎や糖尿病性腎症などにより、腎臓の実質に異常が生じたことで起こる高血圧です。

・腎血管性高血圧
動脈硬化、繊維筋性異形成、高安動脈炎(大動脈炎症候群)、先天性奇形、大動脈瘤、腫瘍などが原因の腎動脈圧迫、血栓・塞栓などにより、腎臓の動脈の狭窄や閉塞が現れたことで起こる高血圧です。

・内分泌性高血圧
原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫などにより、副腎皮質や副腎髄質から分泌されるホルモンの異常が現れたことで起こる高血圧です。

・血管性高血圧
大動脈縮窄症、大動脈弁閉鎖不全症などによって引き起こされる高血圧です。

遺伝的要因と環境要因に分けて解説

ストレスと高血圧
ストレスは高血圧にとって天敵です。
ストレスを受け続けることで、血圧は過度に上昇してしまいます。
その要因は、大きく3つあります。

1つは血管の収縮です。
人はストレスを感じると、脳の中で自律神経のひとつである交感神経が活性化して優位になります。
すると、アドレナリンなどの副腎(ふくじん)髄質が出すホルモンが盛んに分泌され、その影響で血管が収縮し、血圧を上昇させます。
またアドレナリンには、血糖値を上げる作用があります。血糖値があがると、血液はドロドロの状態に。やがて血流が低下し、血管は収縮して血圧はさらに上昇します。

2つ目は、レニンアンジオテンシン系と呼ばれる、血圧を上昇させるホルモンの影響です。
ストレスが慢性的になると、強力な血管収縮作用によってこのホルモンが放出されます。
血管収縮や塩分排出抑制が起こり、血圧が上昇します。

そして3つ目は、循環血液の増加です。
これを誘発するのが塩分の過剰摂取です。
ストレスが慢性化すると、脳は塩分を欲してしまう傾向があります。
血管内のナトリウムが水分を引き付け、血液が増加して、血圧が上昇します。

以上の3つが絡み合い、同時に起こることで血圧上昇を招き、やがて高血圧を発症します。

塩分の摂りすぎ

高血圧の解消を考えるうえで頭に浮かぶのは塩分ではないでしょうか。実際、高血圧の対策としては減塩が謳われています。

しかし、塩分は人にとって必要不可欠な物質であり、塩分無しでは生きていくことができません。実は、塩分が根本の原因ではないのです。

血圧を直接上げる原因は、腎臓の働きにあります。腎臓は血液中の塩分濃度を一定に保つ役割を担っています。しかし、塩分の過剰摂取が続くと、腎臓の機能は限界を迎えます。すると余分な塩分と水分の排出ができなくなり、血液量が増加します。そして結果的に、血圧が上昇するのです。

肥満と高血圧

運動不足・飲酒・喫煙

日常的に運動不足になってしまうと、肥満や糖質異常症、糖尿病の発症リスクが高まります。
末梢血管抵抗が増して、血圧が高くなります。

過度な飲酒は交換神経を刺激し、心拍数が増えて血圧が上がります。とくに、お酒のおつまみを嗜みながらの飲酒は、塩分や脂肪分の過剰摂取につながりやすいため要注意です。

喫煙も高血圧の危険因子です。タバコに含まれるニコチン成分は、血圧の上昇を誘発します。とくに注意が必要なのは、起床時の喫煙です。日中の2倍以上、血圧を上げるというデータがあります。

加齢と高血圧

歳を重ねることによって、血管の柔軟性は次第に失われていきます。しなやかだった血管は徐々に硬くなり、縮んだまま広がりにくくなっていくのです。

この現象を避けることはできませんが、遅らせることは十分に可能です。逆に若い方でも、血圧が高い状態を放置してしまうと、血管が硬くなって動脈硬化を発症します。

それがたとえ10代であっても、血管はどんどん老化するため注意が必要です。高血圧は年齢にかかわらず、誰にでも起こるということを認識して、早期に対処することが大切です。

ほかの病気が原因で起こる高血圧

睡眠障害や環境の変化によって自律神経のバランスが崩れると、交感神経優位で血圧があがります。

また、血管の柔軟性を保つホルモン分泌が減少すると血圧が上がりやすくなります。更年期を境に変動することも多いため、とくに女性の方は注意が必要です。

高血圧の検査・診断

まずは患者さんを安静な状態にして、血圧を測定します。
血圧はいろいろな要因によって変動してしまうため

★フローチャート

合併症が疑われる場合の検査

ホルモン異常や合併症が疑われる場合は、検査機器を使ってより精密な検査を実施する必要があります。

●CT検査

CTはX線を使って体の断面を撮影する検査です。
CT検査では、胸部(心臓、大動脈、肺など)や腹部(肝臓、腎臓)の異常やホルモン器官である副腎の腫瘍を見つけるのに有効です。

●MRI、MR A検査

磁気の共鳴作用によって、体の中の様子を調べる検査です。
臓器を立体的にとらえることができるという点では、CTよりも優れています。
またMR A検査は、血管だけを鮮明に画像化する検査です。
この検査は、脳動脈瘤などの脳血管の病変を調べるのにも有効です。

●超音波(エコー)検査
超音波検査は内臓の形や構造の変化、腫瘍の有無などを調べるのに役立ちます。
心臓、甲状腺、副甲状腺など、さまざまな臓器を調べるのに有効です。

●血管造影検査
血管にカテーテルという細い管を挿入し、造影剤を入れてX線撮影する検査です。血管そのものの形の変化や異常を調べることができます。

動脈硬化の進行具合を調べる検査

高血圧によって動脈硬化がどの程度進行しているのかを調べることで、重篤な疾患を早期に発見することができます。

●頸動脈超音波検査
頸動脈は首のすぐ下を走っている血管です。
心臓から脳へ血管を送り続ける血管なので、動脈硬化の進行を調べることはとても重要です。
脳卒中の発症リスクを調べる際にも有効な検査です。

●血管内皮機能検査
血管内皮は血管の内側にある細胞層です。
血管内皮から分泌される物質の一つに、一酸化窒素があります。
一酸化窒素は、血管を柔軟に拡張させる役割があり、血液量にあわせて血管をしなやかに収縮させる働きを担います。
しかし、高血圧が常態化すると、この一酸化窒素の生産量は低下してしまいます。
この検査によって、高血圧による影響を調べることができます。

高血圧の治療

高血圧の治療の基本は生活習慣の改善ですが、それでも血圧が下がらない場合は降圧薬による薬物治療を併用します。

血圧が140/90mm Hg以上の場合、まずは生活習慣の改善を行います。具体的な改善策としては、減塩を心がけてバランスの良い食生活を送る、運動などで減量に励む、飲酒量を減らす、禁煙する、ストレスを解消する方法を身につける、質の良い睡眠をとる、便秘にならないよう注意するなどです。

その後、3ヶ月以内の生活習慣指導で140/90mm Hg以上の場合(低リスク群)、または1ヶ月以内の生活習慣指導で140/90mm Hg以上の場合(中等リスク群)に、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)などの降圧薬や、利尿薬による治療を開始します。

ただし、メタボリックシンドロームに該当する、糖尿病や慢性腎臓病などの合併症がある、リスク因子が多いなどの場合はすぐに降圧薬による治療をスタートしなければならないこともあります(高リスク群)。

高血圧の原因が明らかな二次性高血圧の場合は、降圧薬による治療とともに、原因となる病気の治療を行います。例えば、腎血管性高血圧なら血管内のカテーテル治療を並行し、原因を取り除きます。

降圧薬をいくつか併用する場合は、作用や副作用が強まることがあるため注意が必要です。組み合わせによっては心臓の脈拍数が異常に少なくなる徐脈や、カリウムの血中濃度が高くなってマヒやしびれ、動悸、筋力の低下などを引き起こす高カリウム血症を起こす可能性があります。もし降圧薬を飲んでいるときに、他の薬を処方してもらう際は必ず飲んでいる降圧薬について報告してください。

また、市販薬でも降圧薬との併用に注意が必要なものがあります。風邪薬や胃腸薬などを短期間服用する程度であれば構いませんが、1週間以上服用する場合は医師に相談しましょう。アセトアミノフェンなどが入った解熱鎮痛薬は、利尿薬の働きを強める作用があるため、こちらも服用の際は医師に相談するといいでしょう。漢方薬には、血圧を上げる働きのある甘草が含まれているものがあるため、漢方薬を服用する場合は医師に相談の上で服用してください。

薬物療法

二次性高血圧の治療

高血圧の予防・対処

高血圧は多くの要因が重なって発症するため、治療後も引き続き生活習慣の改善を行い、発症の要因を減らしていくことが重要です。

食生活では、食塩6g/1日未満を目標にして、減塩の習慣をつけましょう。また、野菜や果物、いも類、大豆、海藻類、魚などに多く含まれるカリウムは血圧を下げる効果を持っているため、毎日の食事メニューに取り入れてください。肉の脂身、レバーやモツなどの内臓類、バター、乳製品、うなぎ、たらこ、いくら、うになどはコレステロールや飽和脂肪酸が多く含まれているため、控えるようにしましょう。

お酒を飲む人は、エタノール換算で1日20〜30mlが適正量となります。男性ならビール中瓶1本程度(日本酒なら1合、焼酎なら半合弱、ワインなら2杯弱、ウイスキーならダブル1杯程度)、女性はその半分程度に抑えましょう。

タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮して血圧を上げる作用があるため、できるかぎり禁煙を目指してください。禁煙することで、高血圧のみならず、狭心症、心筋梗塞、脳卒中のリスクも減らすことができます。

また、肥満の中でも「内臓脂肪型肥満」は高血圧の発症要因となるため、該当する場合はしっかりと改善しなければなりません。

腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上で、「中性脂肪値が150mg/dL以上、HDLコレステロール値が40mg/dL未満(これらのいずれか一方または両方)」「上の血圧が130mm/Hg以上、下の血圧が85mm/Hg以上(これらのいずれか一方または両方)」「空腹時血糖値が110mg/dL以上」の3項目のうち、2つ以上が該当する場合はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)にあたるため、自分の適正体重に近づけるよう減量することが必要です。適正体重は「身長(m)×身長(m)×22」で出すことができます。

内臓脂肪は、体重を落とすことによって皮下脂肪よりも先に減ります。そのため、健康的にダイエットすることが内臓脂肪減少につながります。有酸素運動をメインに、日々の生活に運動習慣を作りつつ、食生活に気をつけながら、適正体重を目指しましょう。

減量期間中、もし前日より体重が増えていても、1週間単位で減っていれば問題ありません。月に1〜2kg程度を目安に、無理なく減量していきましょう。

適正体重になったら、それを維持することも大切です。食事制限だけで減少すると筋肉が落ちてしまうため、必ず運動も並行して行いましょう。過度な食事制限は筋肉だけでなく骨を弱めてしまう可能性もあるため、食事は一日につき150kcal程度減らすことを意識しましょう。

起床時と寝る前に体重を図って記録する習慣をつけるのもおすすめです。ノートなどに、その日の体重や食事内容、運動量などを記録すると、どんな生活をすると体重が増える(または減る)のが客観的に理解できるようになるため、体重がコントロールしやすくなります。

高血圧に関するよくあるご質問

家庭血圧とはなんですか?

仮面高血圧とはなんですか?

血圧がどれくらいで病院に行くべき?

血圧1回目と2回目どちらが正しい?

血圧を下げる食べ物・飲み物は?

血圧が高い時の過ごし方は?

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こちらの記事の監修医師

石塚 豪

泉大沢ファミリークリニック石塚 豪 先生

仙台の泉区大沢にある「泉大沢ファミリークリニック」 院長の石塚です。

10年以上にわたってお世話になりました仙台医療センターを退職し、2019年2月仙台市泉区大沢に新規開業しました。

これまで培ってきました地域医療での経験や基幹病院での高度医療の経験をいかし、専門であります循環器呼吸器疾患を中心に、内科疾患から小児科疾患まで幅広く対応させて頂きます。

「患者さんの不安を安心に変えられるように」を合言葉に、地域の皆様から信頼を頂けるような温かいクリニックを目指します。

仙台市泉区はもちろん、富谷市をはじめとする近隣エリアからの通院も可能です。お気軽にご来院ください。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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