防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)とは?ダイエット効果や使い方を解説
- UnMed Clinic Motomachi 髙倉 一樹 先生
- #内科
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ダイエットをしている人のなかには、「漢方を飲むと痩せる」と聞いたことがある人もいるかもしれません。「漢方を飲むと痩せる」は事実ですが、漢方の種類ややり方を間違うと思ったような効果を得られません。
そこで今回は、漢方ダイエットについて、その効果や肥満の症状別におすすめの漢方薬を紹介します。
目次
「太っている状態(=肥満)」は食べ過ぎや運動不足といった原因が注目されがちですが、漢方では「体質」にも問題があると捉えます。また、「体質」への影響が大きい「生活習慣」や、「環境」も改善の対象となります。
肥満の原因を総合的に考え、日常生活のバランスを整えながら自分に適した漢方を用いることで、痩せやすくリバウンドしにくい体質へと導いてくれるのが漢方ダイエットの特徴です。
そもそも漢方は身体が持つ本来のはたらきを高め、自然治癒力を呼び覚ますことでバランスを整えます。そのため、ダイエット効果をはじめ、むくみや肩こり、疲れやすいといったさまざまな身体の不調の改善・予防にも効果が期待できます。さらに身体への負担が少ないのも魅力のひとつとして挙げられます。
ダイエットに漢方薬を用いる場合は、まず肥満の原因となっている症状を把握する必要があります。最適な漢方薬を選ぶためにも、まずは下記のチェックリストで肥満の原因である症状を振り返ってみましょう。
ダイエット漢方診断チェックリスト
A
B
C
どの項目にチェックが多いかで、ダイエットの方針がわかります。
Aのチェック数が多い ➡ 食欲を抑える
Bのチェック数が多い ➡ むくみを解消する
Cのチェック数が多い ➡ 脂肪燃焼する
Aのチェック数が多い場合はストレスによる過食、Bのチェック数が多い場合は筋肉量の低下、Cのチェック数が多い場合は脂質過多の食事や身体の冷えが原因で肥満になっていると考えられます。それぞれの方針別に最適な漢方を紹介しているので、当てはまる章を参考にしてみてください。
食欲を抑えてダイエットしたい人は、次の漢方がおすすめです。
これらの漢方には直接的もしくは間接的に食欲を抑える効果が期待できます。
大柴胡湯(だいさいことう)は、「気」の巡りをよくし、心身を安定させ、食欲や代謝のバランスを整える作用があります。脂質の代謝改善に効果があり、更年期太りや体力があり筋肉質でガッチリした人に用いられる漢方です。
また、体をクールダウンさせ、炎症や興奮を鎮める作用があるため、高血圧や頭痛、便秘、肥満による肩こり、ストレス、イライラといった症状改善の効果も期待できます。
期待できる効果 |
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主な配合生薬 |
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おすすめなのはこんな人
おすすめできないのはこんな人
まれに間質性肺炎や肝機能障害、黄疸などの副作用が起きる場合があります。初期症状である発熱、から咳、息切れ、呼吸困難、体がだるい、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状が現れた場合は、すぐに使用を中止して病院を受診しましょう。
加味逍遙散(かみしょうようさん)は、血(けつ)の不足を補い、巡らせることで気の滞りを解消する漢方です。ホルモンバランスの乱れによる月経痛や月経不順、更年期障害、不眠症など、中高年の女性に見られる神経症状に効果があります。これらの効果を応用して、ホルモンバランスの乱れを整えることで痩せやすい体質へと導きます。
期待できる効果 |
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主な配合生薬 |
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おすすめなのはこんな人
おすすめできないのはこんな人
副作用として発疹・発赤やかゆみ、吐き気・嘔吐、食欲不振、胃部不快感などの症状が出ることが稀にあります。このような症状が出た場合は、すぐに使用を中止して専門医に相談しましょう。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)は、気と血の巡りをよくして、月経前や月経中に伴う痛みやのぼせ、イライラといった各症状を緩和する効果がある漢方です。また、便秘や頭痛、めまい、肩こりなどの症状にも効果がある漢方としても知られています。月経前や月経中の不安定になりがちな精神を鎮め、暴飲暴食を防止することによりダイエット効果が見込めます。
期待できる効果 |
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主な配合生薬 |
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おすすめなのはこんな人
おすすめできないのはこんな人
まれに服用後に発疹・発赤やかゆみ、下痢、腹痛などの副作用が出る場合があります。このような症状が続く、または強くなった場合は、服用を止めて病院を受診してください。
むくみを解消してダイエットしたい人には、次のような漢方がおすすめです。
上記の漢方は、主に体内に留まっている余分な水分の排出を助けてくれる作用があります。これによりむくみが解消し、見た目のシェイプアップ効果が期待できます。
防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)には、「気」を補い胃腸の働きを高め、余分な水分の排出を促す作用があります。また、脂質代謝を活性化する働きもあるので、むくみの解消や脂肪の分解・燃焼といった効果が期待できます。
消化吸収をサポートしながら、余分な水分の排出させることで、全身を引き締め水太りやむくみを解消します。体内の水分を調整する作用があるため、水分過多による身体のだるさや関節の腫れ・痛み、下半身太りをはじめ、多汗症などにも有効です。
期待できる効果 |
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主な配合生薬 |
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おすすめなのはこんな人
おすすめできないのはこんな人
服用において稀に発疹・発赤やかゆみ、食欲不振、胃部不快感などの副作用が出ることがあります。これらの症状が見られたら、使用を中断して医師などに相談してください。また、呼吸器に何かしらの症状が出た場合や発熱、しびれ、脱力感、黄疸など、重篤な症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
五苓散(ごれいさん)は、身体の働きを高めて水分の排出を促す作用のある漢方です。一般的に二日酔いの症状に用いられますが、利尿作用により体内の余分な水分を排出し、代謝を正常化してくれることや、自律神経の乱れを整える作用により食欲不振や過食を防止できることから、ダイエットにも有効であるといえるでしょう。
そのほか、二日酔いによる頭痛やめまい、吐き気、下痢、暑気あたり、急性胃腸炎などの改善にも用いられます。
期待できる効果 |
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主な配合生薬 |
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おすすめなのはこんな人
おすすめできないのはこんな人
発疹・発赤、かゆみなどの症状が出た場合は、使用を中止して医師に相談しましょう。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、血行を良くして全身の水分調整を行い、余分な水分を排出してくれる漢方です。冷え性や生理不順の改善にも効果的です。
ダイエットとしては冷え性によるむくみや水太りの改善や、ホルモンバランスの乱れからくる暴飲暴食の予防効果が期待できます。さらに、むくみ改善により代謝が上昇することで脂肪がつきにくい身体へと変わっていく体質変化も見込めます。
期待できる効果 |
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主な配合生薬 |
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おすすめなのはこんな人
おすすめできないのはこんな人
まれに発疹・発赤やかゆみ、食欲不振、胃部不快感などの副作用が出る点には注意が必要です。もしこれらの症状が発現したら、使用を止めて医師に相談しましょう。
脂肪を燃焼してダイエットをしたい場合は、次の漢方がおすすめです。
防風通聖散は特に内臓脂肪に効果があります。そのため、特にぽっこりお腹に悩んでいる人におすすめです。
防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、代謝を促進して身体から余分な水分を排出してくれる漢方です。便秘気味の肥満症の人によく用いられる漢方で、「代謝・利尿・便通などの作用」により、お腹の脂肪にも効果があります。その効果は皮下脂肪だけでなく内臓脂肪にも有効で、肥満体質の改善にも役立ちます。
期待できる効果 |
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主な配合生薬 |
など18種類 |
おすすめなのはこんな人
おすすめできないのはこんな人
防風通聖散は18種類と配合されている生薬が多いため、副作用として注意が必要な症状も多くなります。主な副作用としては発疹・発赤やかゆみ、吐き気・嘔吐、下痢、食欲不振、胃部不快感、めまい、発汗、動悸などです。服用により症状が出た場合は、すぐに使用を中止して医師に相談しましょう。
漢方でダイエットをする際には次の点に注意が必要です。
西洋薬と同様、漢方にも飲み合わせが悪い薬が存在します。また、漢方の種類と体質によっては激しく副作用が出る場合もあるので、必ず医師に相談してから漢方ダイエットを始めるようにしましょう。
それから、繰り返しになりますが、漢方をはじめ「飲むだけで痩せる」ダイエット特効薬はありません。適度な運動と食生活の改善があっての漢方である点は留意しておきましょう。
漢方の種類によってはダイエット効果があるため、肥満症の人にも処方されることがあります。しかし、体質に合ったものでないと、その効果は得られにくくなります。また、種類によって副作用が生じやすかったり、飲み合わせの悪い薬を服用していたりするなど、漢方との相性が悪い人もいます。
身体に優しいイメージが強い漢方ですが、場合によっては副作用が発現するケースもあるので、ダイエットに漢方を取り入れる際には必ず医師に相談してから始めるようにしましょう。
漢方ダイエットのベースは「生活習慣の見直し」です。漢方薬はやせ薬ではないため、飲むだけでダイエット効果が得られるわけではありません。漢方薬の服用と同時に、生活習慣を見直すことで身体のバランスが整い、痩せやすい体質に変わっていくのです。
生活習慣のなかでも漢方ダイエットにおいて特に見直したいのが食習慣です。食事の際はカーボ(炭水化物)を最後に摂るようにすることで、血糖値の急激な上昇を抑えられます。これにより強い空腹を感じることがなくなるため、食べ過ぎを防止できます。また、次のように季節によっても意識する点は変わるので、季節ごとに食事内容や摂り方を意識してみましょう。
以降では、漢方ダイエットに関するよくある質問に回答します。
医師の処方箋に基づき、保険薬局で購入できる医療用漢方製剤は保険適用となります。一方、ドラッグストアなどで購入できる一般用漢方製剤は保険適用されないため、購入費用は全額負担となります。
漢方薬は乳幼児から服用できます。そのため、基本的にはどの年代であっても漢方ダイエットは始められます。体質や服用中の薬によっては、効果がないまたは飲み合わせが悪いものもあるので、漢方ダイエットを始める際は必ず医師に相談するようにしましょう。
SNSでも話題の韓国のダイエット漢方「韓方」のなかには、過去に覚醒剤原料に分類されるものが見つかったこともあります。韓国と日本では薬に関するさまざまな基準が異なるため、気づかずに輸入・使用してしまうと知らないうちに法を犯す場合もあるので、使用の際にはよく下調べをするようにしましょう。
また、どの薬にも必ず副作用があるため、一定の危険性はあるといえます。基本的には購入した韓国のクリニックでアフターケアを受けることになりますが、アフターケアがないケースもあります。そのため、韓方を試す際はアフターケアの有無はもちろん、アフターケアを受ける方法まで含めて確認するようにしましょう。
漢方は適切な種類を適切に使用すれば、ダイエットのサポーターになってくれます。ただし、選ぶ漢方を間違えたり、ただ飲むだけで満足したりすると、得られる効果が薄くなるので、注意しておきましょう。具体的には体質に合った漢方を選ぶことと、運動と食生活の改善を同時進行で行うことです。
体質に合った漢方を選ぶのは素人では難しいため、安全性を考慮して漢方ダイエットをはじめる際には必ず医療機関に相談するようにしましょう。
UnMed Clinic Motomachi髙倉 一樹 先生
横浜市中区元町にあります「UnMed Clinic Motomachi 」院長の髙倉です。地元横浜でクリニックを開院しています。
今までに学んできた事、経験した事を最大限活かし、医学と科学をしっかり結び付けながら、患者さんに求められている医療を最大限表現したいと思います。そのために、今の時代の流れの中で、積極的に新しいものを取り入れながら、地元への医療貢献、さらにはここ横浜からグローバルな医療を皆様にお届け出来る様、精一杯努力する所存でおります。
現在、当院ではオンライン診療を立上げ、メディカルダイエット(肥満外来)、不眠症外来、コロナ後遺症外来を実施しております。全国の患者様に対応しておりますので、お気軽にホームページのオンラン診療予約からご予約ください。
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