岩手県盛岡市「くろだ脳神経・頭痛クリニック」、院長の黒田 清司 です。
当院には、頭痛や認知症、めまいでお悩みの方がたくさん来院されますが、これらの症状はどれも予防することが大切です。
そのためには、ご自身の身体の状態を意識して、生活習慣の改善を目指すことはもちろん、定期的な検査や通院で病気の早期発見を心がけることが重要になってきます。
気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。
歳を重ねると、人や物の名前がすぐに出てこなかったり、昨晩の食事の内容を思い出せなかったりと、いわゆる「もの忘れ」がが増えてきます。きっかけさえもらえれば思い出せるという場合はとくに問題はありませんが、最近の出来事をすっかり忘れてしまっている場合は注意が必要です。
認知症とは、認知機能の低下によって症状が起こる病気の総称です。日常生活に影響するほどの症状がみられると、認知症と診断されます。その中でも、もっとも多く、全体の約半数を占めるのがアルツハイマー病です。
本記事では、脳神経外科の医師に監修していただき、アルツハイマー病の前兆・初期症状と、新薬「レカネマブ」を解説しています。
目次
脳の神経細胞(ニューロン)が死んでしまったり、はたらきが悪くなってしまったりすると、やがて記憶力や思考力、行動能力まで失われていきます。その結果、日常の生活や活動をさまたげるようになる病態を「認知症」といいます。
この認知症を引き起こす原因としてもっとも多いのが、アルツハイマー型認知症です。認知症にはさまざまなタイプがありますが、6割から7割程度は
認知症とは、認知機能の低下によって共通の症状のある病気の総称(症候群)です。
認知症はその原因疾患によって、いくつかのタイプに分類されます。
その中で、もっとも罹患者が多く、全体の約半数を占めるのがアルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症は、記憶・思考・推論の能力がゆっくり低下していく脳の病態です。発症までに20〜30年かかるといわれています。発症後も25年ほどかけてゆっくりと進行して行きます。そのため、いつ発症したのか本人でもよくわからないという場合が多く、家族でもその変化を見過ごしてしまいがちです。
また、アルツハイマー型認知症は高齢者の病気のイメージが強いと思いますが、実際は40〜50代などの働く世代をはじめ、若い方では高校生くらいの年齢でも発症する可能性があります。
この65歳未満の方に発症するアルツハイマー型認知症は、若年性アルツハイマーやアルツハイマー病とよばれます。
病態が進行すると、日常生活や社会生活にも支障をきたし、生活の質の低下につながります。現在のところ、残念ながらアルツハイマー型認知症を完治する治療法はありません。しかし、兆候に気付いて早期に診断を受けることは、治療やサポート体制の向上にもつながるため大きなメリットがあります。
アルツハイマー型認知症は本人がかかっていることを認めたがらないことも少なくありません。「歳だから」「忙しいから」といった心理的なブレーキをかけてしまい、なかなか診断に至らないという問題があります。
「何か様子がおかしいな」と感じるサインがあれば、すぐに内科医などを受診して、一度相談して診断を受けることが大切です。
2023年9月25日、厚生労働省は、アルツハイマー型認知症の新たな治療薬「レカネマブ」について、国内での使用を正式に承認しました。これまでアルツハイマー 病の治療はその進行を遅らせるための治療薬が使用されてきました。今回承認された治療薬レカネマブは、アルツハイマー病の原因物質を取り除くことを目的とした、国内で初めての新薬となります。
現段階では、レカネマブの使用対象は、早期のアルツハイマー病の患者さんに限定されます。また、現在は保険適用とするための薬価について議論中であり、年内にも各医療現場での使用が可能となる見込みと発表しています。
いずれにしても、やはり重要な鍵となるのは「アルツハイマー 型認知症の早期発見」です。どのような前兆・初期症状があるのか、どのような進行過程があるのかを解説します。
アルツハイマー病ではとくに、初期の記憶障害が目立ちます。比較的、病態の進行はゆるやかな場合が多いものの、歳のせいでもの忘れすると考えていると認知症が進行する恐れがあります。 また、記憶障害以外にも、気分や行動の変化らコミュニケーションの問題が生じ、混乱して方向感覚を失うこともあります。 下記では、アルツハイマー病の兆候を解説します。
日常のサインを見逃さず、早めの対策が必要です。早期診断が治療やサポート体制の向上にもつながります。
以下の兆候のうち、1つでも気がついたら、早めに医師の診察を受けましょう。
●アルツハイマー病による記憶の消失
日常生活に支障ゆきたすほどの物忘れがひどくなります。一般的な前兆としては、日付や出来事を忘れる、同じ質問を何度もする、名前を忘れるなどが、あります。
● 計画や問題解決がしにくくなる
計画を立ててそれに従って行なうこと、とくに数字を扱うことに、問題が生じてきます。いつものレシピ通りに料理をするなどといった工程が急に分からなくなったり、これまでスムーズに行っていた仕事などもうまくこなせなくなっていきます。
● 慣れた作業をやり遂げることが難しくなる
日常的な作業を完了させたり、よく知っている場所への移動など、よく知っている場所への移動などこれまで簡単にできていた慣れた作業が困難になります。
● 時間や場所の混乱
日付や時間の経過、季節までもが分からなくなるようになります。また時には自分がどこにいるのか、どうやってそこに来たのかを忘れてしまいます。
● 視覚イメージを理解しづらくなる
体のバランス感覚や距離の判断、色の判断などが難しくなり、車の運転に支障をきたすこともあります。
● 言葉を話したり書いたりするが困難になる 言葉が見つからず、会話についていけなくなったり、同じ話を繰り返したりします。また、文章を書いているときに途中で止まったり、身近にある物の名前が出てこなかったり間違えてしまうことがあります。 ● 物を置き忘れる、記憶をたどれなくなる 普段と違う場所に物を置くことが多くなり、物を無くした際にうまく記憶をたどれなくなります。また、病気が進行すると、「人物のものを他人に盗まれた」といいだすこともあります。 ● 判断力の低下 金銭が関連する場面で判断力が低下したり、以前ほど身だしなみに気を使わなくなる傾向も見られます。 記憶の喪失 そのため、とくに記憶障害が目立ちます。だけなく、気分や行動の変化、 とは、記憶や見当識(場所、日時、人への適切な認識)、言語、思考、判断などの認知機能が障害される病態です。脳神経系の病気が原因で発症し、やがて進行していきます。
「レカネマブ」は、アルツハイマー型認知症の治療薬として効果が期待されている新薬です。この治療薬は、すでにアメリカで承認(2023年7月)を受けています。
これまで、アルツハイマー病に関してさまざまな研究が行われてきました。その中でも、アルツハイマー病の患者さんの脳にはアミロイドβ(ベータ)という有害なタンパク質の塊(アミロイド斑)が蓄積されていることがわかっており、この物質がアルツハイマー病を進行させる原因なのではないかという議論がされてきました。
その背景があり、これまで過去20年ほどの年月をかけて実施されてきたアルツハイマー病治療薬の開発は、主にこのアミロイド斑を除去することに注力したものとなっています。そして、このレカネマブも同様に、アミロイドβを除去するように設計された治療薬です。
アルツハイマー病の患者の脳にたまる「アミロイドβ」という異常なたんぱく質を取り除くことができ、症状の進行を抑えることが期待されています。
これまでアルツハイマー型認知症の治療薬は、病態の進行を緩やかにすることを目的として使用されてきました。この新薬レカネマブは、原因とされるアミロイドβを取り除くことができる国内初の薬ということになります。
従来のアルツハイマー病治療薬と比べ、アミロイドβを除去することでアルツハイマー病の進行自体を抑えることが期待できることです。
現段階でレカネマブの適応患者は、
この2つのいずれかに該当する方という制限があります。
すでに中等度以上にまで進行したアルツハイマー病の患者さんには、残念ながらその効果は確認されていません。
また、副作用等のリスクから
こちらも対象外となります。
高齢者の方については対象外となっておりませんが、より慎重に投与が必要です。
レカネマブの治療費は高額であり、アメリカでは患者1人当たり年間約370万円(1ドル140円計算)とされています。一方、日本では現在保険適応とするための薬価について議論中の段階です。年内には確定し、各医療現場での使用が可能となる見込みと発表していますが、少なくとも年間100万円以上の負担が予想されています。ただし、日本では「高額療養費制度」というものがあり、一部の費用が補填される可能性もあります。
くろだ脳神経・頭痛クリニック黒田 清司 先生
岩手県盛岡市「くろだ脳神経・頭痛クリニック」、院長の黒田 清司 です。
当院には、頭痛や認知症、めまいでお悩みの方がたくさん来院されますが、これらの症状はどれも予防することが大切です。
そのためには、ご自身の身体の状態を意識して、生活習慣の改善を目指すことはもちろん、定期的な検査や通院で病気の早期発見を心がけることが重要になってきます。
気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。
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