まずは食中毒が発生する過程を理解することが大切です。
食中毒の原因となる微生物の多くは、自然界に存在しています。そのため、食中毒を起こさないためには、食中毒が発生する過程を理解して、その過程のどこかでストップをかけることが重要です。
微生物による食中毒の予防については、下記の記事をご参考ください。
カンピロバクターは、主に食品や汚水によって人に感染する細菌の一種です。
日本国内で起こる食中毒の中で、もっとも発症件数の多い原因菌がこのカンピロバクターです。
厚生労働省による報告では、2022年の1年間で、国内の822人が感染したとされています。
本記事では、消化器内科の医師に監修していただき、カンピロバクターが原因菌となる食中毒の症状と感染経路を解説しています。
目次
カンピロバクター菌は家畜や野生生物に広く存在する細菌で、とくに鶏肉などの加熱不足の食品から感染することが多いです。
カンピロバクターは適切な加熱処理で容易に死滅します。しかし、加熱が不十分な調理や調理器具が十分に洗浄されていない場合は、感染のリスクが高まります。
また、湧き水や簡易的な水道水を介した感染例も確認されています。
感染を防ぐためには、
などの予防策が重要です。
感染してから2〜7日程度、比較的長い潜伏期間を経て、中毒症状があらわれます。
カンピロバクター菌に感染すると
などの症状があらわれます。
ほとんどの場合、1週間程度で自然治癒しますが、乳幼児や高齢者、免疫力が低下している方は重症化するリスクが高いです。
とくに、乳幼児は胃や腸の機能が未熟なため、お腹を壊したり、嘔吐をしたり、重症化してしまうケースが多いです。脱水症にもなりやすいため、「いつもと様子が違う」と、気になる症状があれば早めにかかりつけ医を受診することが大切です。
医師によって食中毒の疑いがあると診断されれば、大きな病院で血液検査や便培養などを行なって診断します。
食中毒とは、細菌や微生物などに汚染された食品を食べたり、人体に悪影響を及ぼす有害物質を誤って摂取してしまうことで引き起こされる中毒症状です。
感染経路は、口から感染する経口感染(けいこうかんせん)がほとんどです。
食中毒は
など、原因物質によってさまざまなタイプがあります。
カンピロバクターは、細菌性食中毒に分類されます。
カンピロバクター菌以外でも、サルモネラ菌やO-157などの感染事例が多いです。
感染型 | カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオなど |
---|---|
食物内毒素型 | 黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)など |
生体内毒素型 | O-157(腸管出血性大腸菌)、ウェルシュ菌、セレウス菌(下痢型)など |
生の鶏肉には、非常に高い確率で食中毒菌が付着しています。鶏肉はしっかりと火を通して食べることが大切です。
カンピロバクター食中毒を予防するために最も効果がある方法は、加熱による「殺菌」です。詳しくは下記の記事をご参考ください。
カンピロバクターは口から感染する経口感染が主な感染経路です。
この細菌は感染力が高いものの、乾燥には弱く、空気中で長く生き残ることはできません。そのため、空気感染することは非常に稀であり、カンピロバクター菌が人から人へ感染するケースはほとんどありません。
一方で、ある特定の条件下であれば感染リスクが高まります。
カンピロバクター菌に限らず、サルモネラ菌や病原性大腸菌の感染時には、感染者の嘔吐物や便に細菌が潜んでいます。嘔吐物や便を介した感染はある程度のリスクがあるため注意が必要です。
感染者の便に接触した後、十分な手洗いをせずに食品に触れると、感染するリスクが高まります。食中毒にかかった人を看病するときは、嘔吐物や便は直接触らないように、手袋などをつけて処理してください。排便処理後やオムツ替えの後は必ず手を洗い、アルコール消毒等を活用していつもより念入りに感染予防対策を取りましょう。
など、これらは一般的に性感染症(STD)とはみなされませんが、性行為を通じて感染する可能性はゼロではありません。
とくに口腔性行為や肛門性行為などは感染リスクがあるため要注意です。衛生状態が不十分な場合やパートナーが感染者である場合は、これらの病原体による感染が起こる可能性があることを留意しておく必要があります。
カンピロバクター菌は、食べてから発症するまでの潜伏期間が2~7日間と長く、感染した数週間後にギラン・バレー症候群 ( GBS )という病態を引き起こすこともあります。
ギラン・バレー症候群(Guillain-Barre Syndrome, GBS)とは、主に運動神経が影響を受けて、手足の麻痺や呼吸困難などの症状が現れる病気です。その原因とされる菌の1つに、カンピロバクター菌があります。ウイルスや細菌などの感染症が免疫反応を刺激し、それが自身の末梢神経に対して誤って攻撃を行うことで発症します。
発症者の約60%は、発症の1~3週間前に風邪のような症状や下痢などの感染症を経験しています。
その他にも、
など、感覚の異常や痛み、不快感等のさまざまな症状があらわれます。
重症化した場合は、
も発生する可能性があります。
ギラン・バレー症候群は、日本で特定疾患として難病に認定されており、人口10万人当たり約1人が発症するとされています。
カンピロバクター菌をはじめ、感染した病原菌によっても治療法は異なりますが、水分をしっかりとって安静にすることが治療の基本です。下痢や嘔吐の症状によって、水分が失われがちです。
抗菌薬投与は不要なことが多く、原則としては対症療法が優先されます。
「下痢止め薬は飲んで大丈夫ですか?」という質問をされる患者さんが多いですが、下痢は細菌を体外へ出すための防衛反応なので、無理に止めずに整腸剤などで治療します。
水分がとれない場合は、脱水症状を引き起こすことがあります。受診して点滴などの治療が必要です。
また3日以上たっても熱が下がらないなど、辛い症状が続いている場合は受診(場合によっては再受診)してください。
まずは食中毒が発生する過程を理解することが大切です。
食中毒の原因となる微生物の多くは、自然界に存在しています。そのため、食中毒を起こさないためには、食中毒が発生する過程を理解して、その過程のどこかでストップをかけることが重要です。
微生物による食中毒の予防については、下記の記事をご参考ください。
同じ消化器の感染症として類似していますが、別の感染症です。
カンピロバクター同様に、消化器に感染する細菌としてピロリ菌があります。実は元々ピロリ菌も、カンピロバクター菌の1つと考えられており、当初はカンピロバクター・ピロリ菌と名付けられていました。
その後、カンピロバクターから独立し、ヘリコバクター・ピロリ菌という名前に変わっています。ピロリ菌の感染経路は、明確になっていませんが、口を介した感染や幼少期の生水摂取が主な要因と考えられています。
カンピロバクター菌は食中毒の代表格となる細菌です。ピロリ菌は、慢性胃炎の発症要因とされており、感染したほとんどの人に胃炎の症状がみられます。
しばらくは消化のいい食べ物を選びましょう。
主食は、おかゆや柔らかめのごはん、うどんなどを選びましょう。おかずは、葉物野菜や白身魚などを柔らかく煮込んだものが消化によく、胃に優しいのでオススメです。水分は、水や麦茶などが適しています。
鎌田内科クリニック鎌田 広基 先生
岩手県盛岡市の鎌田内科クリニック、院長の鎌田です。昭和42年1月19日、当地に父が診療所を開設し、平成5年に小生が着任して現在に至っております。その間、平成8年に老人保健施設”銀楊”の開所により、父はその施設長、小生は当院の院長に就任しました。
当クリニックがこれまでの歳月を歩むことができたのは、ひとえに、皆様のお力添えのおかげと、深く感謝しております。
地域医療の益々の発展と、皆様が健康で豊かな毎日を過ごしていただけるように、スタッフ一同、より一層精進して参ります。今後とも鎌田内科クリニックを宜しくお願い致します。
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