胆のうは消化過程で重要な役割を担う臓器です。
胆のうは、肝臓の下に位置する小さな袋状の臓器で、約50mlの胆汁を蓄える役割を果たします。胆汁は肝臓で生成され、脂肪の消化を助ける消化液です。食事をすると、胆のうは収縮し、胆汁を十二指腸に放出して脂肪の分解を促進します。胆のうは消化過程で重要な役割を担い、特に脂肪の吸収に欠かせない臓器です。
胆のう炎は、胆のうに炎症が生じる病気です。「急性胆のう炎」と「慢性胆のう炎」があります。
急性胆のう炎のほとんどが、胆石が胆のうの出口や胆のう管を塞ぐことによって起こります。右上腹部の激しい痛みが長引いたり、熱が出てきたような場合は胆のう炎を疑って早めに受診しましょう。
本記事では、消化器内科の医師に監修していただき、胆のう炎の症状と原因、治療法を解説しています。
肝臓から分泌される胆汁を十二指腸へと運ぶ一連の管状の構造を胆道(たんどう)といいます。この胆汁の通り道が塞がれて感染を起こす病態が胆道感染症です。
胆道感染症には、胆のうに起こる「胆のう炎」と、胆道に起こる「胆管炎」があります。
胆のうに急性の炎症が生じる病気を、急性胆のう炎といいます。急性胆のう炎の約90%は胆のう石が原因です。
慢性胆のう炎は、胆のうの長期にわたる炎症によって引き起こされる病気です。おだやかな急性胆のう炎を繰り返すことで発症します。胆のうが何度も炎症を繰り返すと、たとえ軽度の炎症であっても、やがて胆のうの壁が厚くなり、変形して萎縮を起こします。やがて胆のうの機能が低下し、胆汁を濃縮したり分泌したりすることができなくなります。
一方、重症の急性胆のう炎のあと、慢性胆のう炎に移行することもあります。また、胆のうの出口に胆石が詰まった状態が続くことで、胆のうが肥大してしまい、徐々に慢性化することもあります。
胆のう炎は、胆のうの出口に胆石がひっかかり、胆汁が滞るのが原因です。胆のうに胆汁が充満して膨れ上がった状態となります。胆石が詰まったままの状態が続くと、胆のうに充満した胆汁に腸から逆行してきた大腸菌などの細菌がまじります。その結果、細菌は胆のう内で増殖し、炎症を悪化させます。
細菌感染が起きて重症化すると、ひどい場合は胆のうに穴があき、胆汁が腹腔に漏れ出して腹膜炎を起こすことがあります。命にかかわることもあるため、注意が必要です。
胆のう炎の主な症状は、急性と慢性とで大きく異なります。
よくある症状としては
があげられます。
もっとも強くあらわれるのが腹痛です。右上腹部の痛みを感じることが多く、右の肩や背部などにも激しく鋭い痛みが生じることがあります。この痛みを疝痛発作といいます。
疝痛発作は、胆のうの出口や胆のう管に詰まった胆石を押し出そうとして、胆のうが強く収縮することで生じます。痛みが強くなったり、弱くなったり、人によっては鈍い痛みが長く続くこともあります。
また、右上腹部を触ると膨れたような感覚があったり、圧迫するような痛みを感じたりすることもあります。
初期段階では、さほど高い熱はでずに微熱程度が続きます。しかし、炎症が広がったり、細菌感染がさらに進むと次第に熱が高くなって、39度を超える高熱があらわれます。悪寒や冷や汗を伴うこともあります。
右側の肋骨の下部に位置する領域を右季肋部(うきろくぶ)といいます。具体的には、右の胸郭下部から腹部の上部にかけての範囲です。この部位には、胆のうの他、肝臓、右腎臓の一部、大腸の一部などの重要な臓器が含まれています。これらの臓器に障害が起こった際に、右上腹部に痛みを感じることがあります。
慢性胆のう炎の症状は、急性胆のう炎ほど激しくはなく、比較的軽度です。食後に右上腹部や背中などに、シクシクとした痛みや軽い鈍痛を感じる程度です。一方で痛みは長期間にわたって続くことがあります。また、お腹が張った感じや不快感が続いたり、もたれや食欲不振など不定愁訴に近い症状しか現れない場合もあります。
急性胆のう炎による激しい疝痛発作を経験せずに慢性化した場合は、胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの病気ではないかと疑う方も少なくありません。このようなはっきりとしない自覚症状の影には、胆のうがんが隠れているケースもあるため、気になる症状が続く場合は早めに受診して検査を受けるようにしましょう。
胆のう炎の症状の一つである腹痛は、数限りないさまざまな病気で起こります。そのため、なるべく正確な診断ができるように、できる限りの情報を医師に伝えられるようにしましょう。
どのような痛みか?痛む場所は?痛み始めたのはいつ頃?以前、かかったことがある病気は?
急性胆のう炎は、血液検査だけで確定診断を行うことはできませんが、血液検査は重要な診断手段の一つです。急性胆のう炎が疑われる場合、以下の血液検査の結果が参考になります。
血液中の白血球数の増加は炎症や感染の存在を示します。白血球数が1500/µL以上になった場合は、胆のう炎が重症化している可能性が高くなります。
炎症や組織細胞の破壊が起きた時に、血清中に増加するタンパク質です。病気の進行や重症度を知るうえで、重要な指標となります。
肝機能検査: アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)やアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ(ALP)などの酵素のレベルが上昇することがあります。
急性胆のう炎の患者では血中ビリルビン値が上昇することがあり、これは胆汁の流れが妨げられていることや、肝機能が一時的に低下していることを示します。
急性胆のう炎の診断に有効なのが画像診断です。必ず行われる腹部超音波検査(腹部エコー)は、胆石の存在や位置を確認することができます。胆汁が充満すると胆のうが腫れたり、胆のう壁が厚くなることがあります。腹部超音波検査によってそれらの情報も得ることができます。
超音波検査だけでは急性胆のう炎を確認できない場合は、CT検査を行います。CT検査は高解像度の画像情報によって、胆のうおよび周囲の臓器の詳細な構造を観察するのに有用です。胆石の位置や大きさ、胆のう壁の肥厚、炎症の程度などを正確に評価できます。
また、急性胆のう炎に関連する合併症(例えば、胆のう穿孔、膿瘍形成、膵炎など)の有無を早期に発見するのに役立ちます。
腹痛の原因が急性胆のう炎以外のものである可能性がある場合、CT検査は他の腹部疾患(例えば、消化管穿孔や腸閉塞、虫垂炎、腫瘍など)との鑑別を行うことにも役立ちます。(X線撮影を行うこともあります。)
マーフィー徴候(Murphy’s sign)は、胆のう炎を診断する際に用いられる臨床徴候です。マーフィー徴候は、特に急性胆のう炎の診断において有用です。
検査は以下のように行います。
この徴候が陽性である場合、胆のう炎が疑われます。
以下、参考となる動画を紹介します。1分弱で視聴できる、とても分かりやすい動画です。
※ 上記の動画自体には監修しておりません。あくまでも参考としてご覧ください。
胆のうは消化過程で重要な役割を担う臓器です。
胆のうは、肝臓の下に位置する小さな袋状の臓器で、約50mlの胆汁を蓄える役割を果たします。胆汁は肝臓で生成され、脂肪の消化を助ける消化液です。食事をすると、胆のうは収縮し、胆汁を十二指腸に放出して脂肪の分解を促進します。胆のうは消化過程で重要な役割を担い、特に脂肪の吸収に欠かせない臓器です。
高齢者や糖尿病などの疾患がある方、38度以上の発熱がある方は注意が必要です。
準備中
胆のうの壁がカルシウムの沈着によって硬化した状態です。
陶器様胆のう(Porcelain gallbladder)とは、胆のうの壁がカルシウムの沈着によって硬化し、陶器のように白く見える状態のことを指します。これは、慢性胆のう炎や長期にわたる胆石の存在が原因で発生します。X線撮影を行った際に胆のう壁が白く映るようになります。
血液検査や尿検査だけでは確定診断できません。
慢性胆のう炎では、血液検査や尿検査などでは、ほとんど異常があらわれません。そのため、超音波検査によって胆のう壁の肥厚を含めた胆のうの形の変化を確認します。また、胆道造影を行い、ほかの疾患の可能性を除外しながら鑑別していきます。
などのあります。
LCクリニック仙台佐藤 俊裕 先生
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