指に痛みを感じる際は、整形外科を受診しましょう。
指の第一関節に起こるヘバーデン結節、指の第二関節に起こるブシャール結節ともに、整形外科の受診で問題ありません。
また類似した症状の出る関節リウマチとの区別がつかない場合でも、はじめは整形外科で問題ありません。
より専門的な診断と治療が必要と判断された場合は、リウマチ科や膠原病科などの専門機関にご紹介されるながれとなります。
へバーデン結節は、指先に一番近い関節(指の第一関節)に膨らみができる原因不明の疾患です。
加齢にともなって増えていくこのへバーデン結節は、更年期を迎えた中高年の女性に多くみられます。なかには40代を迎えたあたりから発症するケースもあるようです。
本記事では、へバーデン結節の診療にあたっている医師に監修していただき、手指の第一関節が腫れて痛む病気を解説しています。
目次
へバーデン結節は、手指の第一関節であるDIP関節に膨らみができる原因不明の疾患です。関節が変形する病気「変形性関節症」の1つで、中高年の女性に多くみられる加齢性の疾患とされています。
変形をともなうため、関節リウマチと間違われやすいですが、別の疾患です。
ご自身の母親・祖母がへバーデン結節だったので、「自分もいつか発症するのでは?」と心配される方がいらしゃいます。しかし、へバーデン結節と遺伝の関係性は現在のところ証明はされていません。遺伝性の疾患ではないと考えられています。
もし、家族にへバーデン結節の方がいらっしゃり、ご自身も同じような病態になった場合、それは遺伝ではなく似たような生活習慣によるものが大きいと思われます。体質が似ていることを考慮して、指先に負担をかけないように注意しましょう。
炎症によって手指の第一関節(DIP関節:ディーアイピーかんせつ)が赤く腫れたり盛り上がったように曲がったりして、痛みを伴うこともあります。腫れや変形の症状は、主に人差し指から小指までの複数指に発生しますが、親指にみられる方もいらっしゃいます。
手指は普段の生活の中でも使うことが多い部分なので、指を曲げたときに痛みがでたり、動かしにくさなどの可動制限が起こると日常生活に支障をきたすようになります。関節の痛みは時間の経過とともに徐々に治ることが多いですが、関節の変形は残ります。
また第一関節の背側には、ミューカスシスト(粘液嚢胞)とよばれる水泡ができることがあります。
へバーデン結節と同じような症状が、第二関節(PIP関節:ピーアイピーかんせつ)に起こることもあります。この疾患をブシャール結節といいます。関節の腫れ、痛み、変形などが主な症状で、へバーデン結節と同様に、更年期以降の女性によくみられます。
第二関節が曲がらないと、手指の握りに支障をきたすため、へバーデン結節以上に日常生活に支障をきたしてしまう可能性が高いです。
ブシャール結節は指の頻回な使用や酷使が引き金となる場合や、加齢やホルモンの変調が要因となると考えられています。しかし、はっきりと明確な原因は未だ分かっていません。
症状は関節リウマチとよく似ているため、リウマチとの鑑別がとても大切です。
関節リウマチも同様に、関節の腫れや痛みが現れる病気です。関節に炎症が起こり、痛みや変形が起こるという点も、へバーデン結節と似ています。
一方、関節リウマチは、へバーデン結節と異なり、第一関節ではなく、第二関節や第三関節にも腫れや変形の症状が現れます。
また関節リウマチの特徴としては、起床時におこる関節のこわばりがあげられます。関節リウマチは全身疾患のため、微熱や全身の倦怠感などの症状がでることもあります。
よって、第一関節以外にも痛みやこわばりを感じたり、全身疾患も出たりする状況であれば、へバーデン結節ではなく関節リウマチの疑いが強くなります。
へバーデン結節は未だ、原因が明確になっていない疾患です。しかし、これまでの研究や臨床データなどから、いくつかの発症理由、リスク要因があげられています。
それは、
です。
へバーデン結節の発症は、比較的、日常で手指を使う機会の多い方にみられています。たとえば、重労働やデスクワーク、農作業などの仕事、またピアニストやギタリストなどの弦楽器演奏者にもいらっしゃいます。趣味で裁縫作業など手先を使われる方にも、へバーデン結節の方が多いです。
へバーデン結節に限ったことではありませんが、日常生活でも使うことが多い手指は、何かと負担が大きくなりがちです。現代ではスマートフォンの普及もあり、年齢問わず手指を使いすぎてしまう方は大変多くなっています。
女性の方が男性よりも家事などを含めて手指を使う頻度が多いこと、そして男性よりも筋力が弱く指に負担がかかることで、使いすぎによる影響が出やすいと考えられています。
加齢にともない軟骨は減り、骨は徐々に弱くなっていきます。また若い頃と比べて靭帯や腱なども、しなやかさは無くなり、その分、指関節への負担は大きくなります。
手指を使う機会がそれほど多くなくても、指関節への負担が大きければ、使いすぎと同じ状態になり、痛みや腫れにつながります。
へバーデン結節は、更年期を迎える女性に発症しやすいことから、女性ホルモンとの関係が指摘されています。
更年期とは、閉経前後5年ほどの時期を指します。この時期は体に大きな変化がみられ、心身ともにさまざまな不調が起こりやすいです。へバーデン結節もその一つと考えられます。
関節の痛みが強い場合は、普段の生活でなるべく「指先に負担をかけない」ことが重要です。
とはいえ、日常では手指をひんぱんに使います。ちょっとした工夫で痛みを軽減できますので参考にしてください。
鉛筆やお箸など何かを持つときに、第一関節を曲げた際に痛みを感じることがあります。とくに細いものを持つと痛みが出やすいため、なるべく太いお箸を選んだり、布やテーピングを巻いて太く補強したりするだけで負担は軽減できます。
鉛筆を持つときにも補助器具などを利用してグリップを太くしてみましょう。
ものをつかむときに、つまむような動作は第一関節を曲げるため痛みが出やすいです。第一関節はなるべく伸ばし、第二関節や第三関節、そして手のひらをなるべく使うようにします。
たとえば雑巾を絞る際は、指先ではなく、なるべく手のひらを使います。またペットボトルなどの蓋をあける際は、指先ではなく指の腹を使うように心がけましょう。
パソコンやスマートフォンを操作する機会が多いという方もいらっしゃると思います。パソコンのキーボードを叩く際に指先を立てるようにすると、関節の変形を助長します。キーボードは指を寝かせるようにして、指の腹で優しく押すようしましょう。
スマートフォンの操作も同様に、画面をタッチする際は指先を立てるのではなく、寝かせて優しくタッチします。手を使ったらなるべく休み、使いすぎには十分注意しましょう。痛むときはしっかりと安静にしてください。
女性であれば、お化粧品やクリームなど、びんに入っているものに指を入れて探るなど、指を何かに突っ込むような手の動きをする機会があると思います。手先の微細な動きが求められ、負担もかかりますので、症状のある指は直接使用しないように心がけましょう。
綿棒やスプーンなどを補助的に使用するだけで、手指への負担はかなり軽減できます。
指の第一関節に痛みや腫れの症状がある場合、レントゲン検査によって指の状態を調べます。第一関節に変形や軟骨のすり減りがみられる場合、骨同士がぶつかり合ってできる骨のとげ(骨棘)が確認できる場合があります。
また類似した症状がでる疾患との鑑別も重要です。たとえば関節リウマチは、血液検査や尿検査でも診断できます。それらの結果から関節リウマチではないと判断されれば、レントゲン検査の結果から、へバーデン結節と診断されます。
へバーデン結節の主な手術としては、関節を削って関節の痛みと変形を除く関節形成術、さらに関節を固定して動きを安定させる関節固定術があります。
この手術によって、変形が矯正され、痛みも軽減されます。とくに人差し指の場合は、人差し指そのものの動きよりも、親指との間で物をつまむ動作のような、安定性を確保するための動きが大事です。現在は、骨棘だけを取り除く関節痛形成術がよく行われています。
固定術は関節が固定されて曲がらなくなるため、比較的不自由を感じにくい人差し指に適用される場合が多いです。
指に痛みを感じる際は、整形外科を受診しましょう。
指の第一関節に起こるヘバーデン結節、指の第二関節に起こるブシャール結節ともに、整形外科の受診で問題ありません。
また類似した症状の出る関節リウマチとの区別がつかない場合でも、はじめは整形外科で問題ありません。
より専門的な診断と治療が必要と判断された場合は、リウマチ科や膠原病科などの専門機関にご紹介されるながれとなります。
こばやし整形外科クリニック小林 義尊 先生
宮城県名取市「こばやし整形外科クリニック」、院長の小林です。
大学卒業後12年間福島にて、その後8年間仙南地区と仙台市内において整形外科およびサブスペシャリティである手外科診療を行ってまいりました。
医師を前にすると、話しにくかったり聞きづらかったりした経験がおありの方が少なからずいらっしゃるかと思います。話しやすい環境を整え、できる限り患者様のご期待にお応えしたいと考えています。
また、得意とする手外科診療だけでなく、リハビリテーションなども含めた総合的な整形外科診療を行ってまいります。
宮城県内で手外科をお探しの方は、当院へご相談ください。何卒よろしくお願い申し上げます。
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