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自然災害や交通事故、身近な人の死、病気や入院、暴力など、ショッキングな体験が心の傷として残ってしまい、時間が経過しても強い恐怖感が消えないことをPTSD(心的外優後ストレス障害)といいます。そのトラウマ、後遺症に悩まされ、日常生活が困難になってしまう病気です。
本記事では専門医に監修していただき、PTSDの症状と、トラウマになりやすい人を解説しています。
トラウマは「心的外傷」とよばれ、なんらかの体験によって心が本来の役割を果たせなくなった状態をさします。
そのトラウマがあることで、さまざまな症状が起こりやすくなっている場合、PTSD(ピー・ティー・エス・ディー:Post Traumatic Stress Disorder)という「心的外傷後ストレス障害」と診断されることがあります。
トラウマによって起こる病気です。心的外傷後ストレス障害ともよばれます。
トラウマは災害や事件、交通事故など、生命をおびやかされるほどの恐怖体験が脳にダメージを与えてしまい、心に傷をおった状態です。
後遺症によって日常生活に大きく影響を与えてしまうため、なるべく早い段階で治療することが大切です。
神経が過敏になっているため、小さな物音で飛び上がるように驚いたり、人の動きに対して過剰に反応してしまったりすることがあります。また、集中力が低下したり、怒りっぽくなったり、臆病になってしまう方もいらっしゃいます。
これらの反応は、過覚醒(かかくせい )とよばれるPTSDの特徴的な症状の1つです。
詳しくは、下記「PTSDの症状」で解説します。
過去の出来事によって、心に傷を残すほどの状態となったものを「トラウマ体験」といいます。
ここではトラウマ体験の具体例として、
を紹介します。
非常に恐ろしい出来事がトラウマになる場合があります。
地震や台風、洪水や火事などの予測できない自然災害による被害があげられます。大切な人との死別や、家屋・財産を失ってしまい、トラウマ反応に苦しむ方々がいらっしゃいます。
本記事で解説する「PTSD」という病気の研究が日本でさかんになったのは1990年代。きっかけは阪神淡路大震災をはじめとする自然災害だったといわれています。
不慮の事故による死別やケガによって、事故の規模やケガの程度に関係なくトラウマにつながるケースがあります。また自分が加害者となって起きた事故についても、たとえ自分が無傷であったとしても、周囲の人を傷つけてしまった罪悪感でトラウマになってしまう場合があります。
自身や大切な人の発病など、苦しむ人を助けることができない状況が、トラウマのきっかけになることがあります。自分の力では制御できないことに圧倒されて、なすすべもない状況に無力感を覚えます。とくに我が子やパートナー、親など、近親者の発病や死別をきっかけにトラウマになる場合があります。
悪意のある行為によって傷つけられた方は、たとえ時間が経過して身体的なケガが治ったとしても、心の傷がそう簡単に消えることはありません。社会に対して安心なものとは信じられなくなってしまい、トラウマのきっかけとなります。
とくに近年では性犯罪の増加が大きな問題となっています。なかでも強制わいせつ罪の発生件数は大幅に増え、PTSDの発症に悩まされる方が増えているのが現状です。
性犯罪は事件の捜査やその後の裁判にかかわるなかで、被害の状況を話したり思い出したりする体験によって、被害者がさらに傷つけられてしまうことが少なくありません。このように、二次的な被害を受けるケースがあります。
非日常的な恐怖体験だけではなく、日常的にくり返されてきた出来事が、心に複雑な傷を残してしまうことがあります。
PTSDの中核となる症状は、主に3つあります。その3つすべてが1ヶ月以上続く場合、PTSDと診断されます。
これは、アメリカ精神医学会で定められた診断基準をもとにしています。
トラウマになるような事件や事故にあうと、そのときのつらい体験が何度もよみがえります。これらの苦痛に悩まされる症状が、再体験です。ただ思い出すだけではなく、再体験という名の通り、まるで事件や事故をもう一度体験しているような、とてもリアルな感覚に襲われます。
再体験症状は、侵入的想起ともよばれます。嫌な記憶が頭の中にかってに侵入し、拒みたくても拒むことができない状況に陥ります。発症を事前に完全に防ぐことはできません。思い出したり、夢にみてしまったりすることがあります。
日に何度も苦しむ人、ふとしたきっかけで発症する人など、思い出すきっかけや症状の現れ方は人それぞれです。
再体験症状によって、寝つきが悪くなったり、集中力が低下したり、日常生活に支障をきたしてしまうケースも少なくありません。引っ込み思案になり、外出を拒んでしまうようになるなど、元気に活動できなくなります。
嫌な記憶を忘れよう、できるだけ考えないようにしようと、トラウマ体験に関連するものを避けようとするのが、回避・まひ症状です。
嫌な記憶を思い出してしまう再体験症状とは対照的に、「忘れよう」とする症状です。
事件や事故を思い出すのがつらくて、似たような状況を避けようとします。現場に行けなくなったり、当時の関係者に会えなくなってしったりするのも、この回避症状というトラウマ反応の1つです。
たとえば、性的被害の回避症状があげられます。性暴力の被害にあった女性にとって、その怖く悲しい体験を思い出すのはとてもつらいことです。その苦しみを避けるために、誰にも相談せず、一人で抱え込み、泣き寝入りしてしまうケースは少なくありません。そして、男性が多いところに近づけなくなることもあります。
関連する事物をなにもかも回避してしまうため、できることが減っていきます。行動範囲も狭まり、人との接触を避けるようになります。やがて、意欲や関心がとぼしくなり、いしいきとした感情がまひして、感じられなくなっていきます。
この回避・まひは、再体験と並行して現れることがあります。嫌な記憶を思い出して苦しみ、それを避けるために回避行動に走ります。いわば、再体験の反動ともいえる症状です。再体験と回避を繰り返し、悪循環に陥っていきます。
一度つらい出来事にみまわれると、その記憶が頭にのしかかって、つねに気が抜けない状態となります。これが、過覚醒とよばれる症状です。
トラウマ体験のショックによって、自律神経の働きに乱れが生じて、常に緊張している状態になります。
神経が過敏になって小さな物音で飛び上がるように驚いたり、人の動きに対して過剰に反応してしまったりするようになります。集中力が低下したり、怒りっぽくなったり、臆病になってしまう方もいらっしゃいます。
緊張によって気の休まる時間ないため、心身ともに疲れてしまい、やがて生活が破綻してしまうケースもあります。この過覚醒の緊張感は、自分で意識して警戒しているのではなく、無意識に過剰な反応をしています。 そのため、自分で制御することはできません。
本来、トラウマ反応は心理面に起こるものです。しかし、トラウマに悩まされ、心理的に落ち着かない状況が続くことで、体にもさまざまな症状があらわれます。
主な症状としては、
などの症状があげられます。
また、
などの症状がみられることもあります。
これらの症状は、自律神経が緊張状態になることで起こると考えられます。PTSDの特徴的な3大症状のなかでは、過覚醒の一部として当てはまります。身体的な症状は、どうしても目に見えておこる表向きの症状に対しての治療が行われがちです。
しかし、これらの症状の根底にはトラウマ体験の影響があるため、その対処では不十分です。いつまでも完治しません。体験の記憶を克服しないかぎり、身体症状は完全には治らないのです。
トラウマ反応が1ヶ月以上続くと、PTSDと診断されます。その後も数ヶ月、中には数年以上にもわたって症状が続いてしまうことは決して珍しいことではありません。
長引くほど、対人関係を含めた日常生活に支障をきたしてしまうため、できる限り早い段階での治療介入が重要です。
トラウマになるような事件や事故を経験すると、その後もしばしば出来事を思い出し、その苦痛に悩まされてしまうことがあります。これを再体験といいます。
この再体験のもっとも激しい症状がフラッシュバックです。記憶が生々しくよみがえってしまうフラッシュバック現象が起きると、記憶が飛んだような状態になります。
そして現実への認識が失われ、事件事故当時の心理状態に陥ってしまうのです。
加害者が近くにいると思って暴れたり、家族や友人などの見知った人でも犯人の姿にみえてしまったり、日常のことが手につかなくなってしまいます。
トラウマのきっかけによっては、たとえば火事の臭いを思い出したり、ケガの痛みを感じると訴えたりすることもあります。
このフラッシュバック現象は、ときに危険にさえつながる症状の一つです。まずは安全を確保することが第一、そして適切な治療をうけ、再発の予防につとめます。
適切な治療をうけ、記憶を認識すれば、フラッシュバックが起きにくくなると考えられています。
人間は対処能力を超えるような圧倒的な体験をすると、単に心理的な影響を残すだけでなく、その強い衝撃によって脳に外傷をつくることが研究で明らかになっています。
とくに幼少期の成長過程でトラウマ体験をすると、脳の発育がダメージを受けて変化しやすいといわれています。
情動と記憶の調整にかかわる海馬が発達できず、萎縮してしまいます。
自律機能のほか、認知機能にかかわる前帯状回。PTSDでは海馬や扁桃体とともに、この前帯状回が萎縮するといわれています。
攻撃行動や恐怖反応、情動的な記憶にかかわる扁桃体の血流が、低下するといわれています。
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家庭内などで長期にわたる虐待がきっかけとなり起こった病態を、複雑性PTSDと呼ぶように提案されています。
自分自身や身近な人、置かれている環境など、信頼感が幅広い範囲で深刻に損なわれてしまうことで、あらゆるものに危険があるように感じてしまいます。
感情のコントロールがしづらく、低いレベルの刺激に対して激しく反応します。
結果、他人も自分自身もまったく信じられなくなることから
いることで、複雑性PTSDでみられる症状はのような病態がみられても、診断基準通りではないことも少なくありません。
PTSDの診断基準(DSM-5)は、戦闘体験やレイプ被害など、米国で行われた研究によって作られたもので、基準の範囲がかなり狭くなっています。
そのため、明らかにトラウマ体験があり、尚且つPTSD症状が出ているにもかかわらず、診断基準を正確には満たしていないというケースが出てきてしまうのです。
からだとこころのクリニックラポール佐竹 学 先生
宮城県仙台市の心療内科、からだとこころのクリニックラポールでは、身体疾患にも精神疾患にも対応しています。そのため、症状や原因別にそれぞれ違う病院に通って頂く必要はありません。
場合によっては、專門治療を行っている大学病院などにご紹介させて頂くこともございますが、まずは当クリニックにお越し頂ければ、適切な検査と診断を行い、患者さまにとって最も良いと思われる治療方針をご提案させて頂きます。
身体の症状にせよ、心の問題にせよ、患者さまがお持ちのお悩みは全て真正面から受け止めるようにしています。
職場や家庭についての不満、転職や転勤など環境変化による不安など、何でもお気軽にお話しください。
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