尿の濁り・臭いは病気のサイン?白くなる原因、疲れやストレスとの関係を解説
この記事は、尿の濁りや臭いが気になる方に向けて書いています。一時的であれば問題ないとされていますが、白く濁っている状態が続いている方はぜひ、ご覧ください。
基本的に尿は透明に近い薄い黄色が正常で、匂いはほとんどありません。一方で、極端に水分が少なくなると濃縮された尿は色が濃くなり、少し臭うことがあります。さらに、なんらかの影響で尿が濁ったり、臭いが強くなることがあります。
本記事では医師監修のもと、尿の濁り・臭いに隠れた病気のサイン、白く濁る原因と疲れやストレスとの関係を解説しています。
目次
尿が濁る原因
正常な尿(健康なときの尿)の色は薄い黄色です。これは古くなった赤血球が分解されてできるウロビリンという黄色い色素が尿に微量に含まれるためです。この体外へ排出されるウロビリンの量は基本的に一定であるため、尿の量が多いときにはより薄い黄色になり、逆に尿の量が少ないときは濃い黄色になります。
夜間、睡眠中は生成される尿の量が少なくなるので、朝一番の尿は色が濃くなります。もし日中も濃い黄色の尿が出たら、体内の水分が不足している可能性があるため、水分補給が必要です。
さらに、もし安静時に
- 尿がコーラのような色(褐色尿、茶色の尿)をしている
- 尿が白く濁っている
- 尿が泡立っている(なかなか消えない)
このような尿の様子に異常を感じたら、一度、医療機関を受診しましょう。
褐色尿になったり白く濁ったりする(尿白濁)場合、
- 尿中の塩類結晶化
- 尿路での細菌感染
- 血尿による濁り
などが原因として考えられます。
一時的に尿の様子が変化することはありますが、その背景になんらかの病気が隠れている場合がありますので、注意が必要です。
尿が濁る、異常を感じたら何科?
尿の異常は、腎臓の機能や尿路(腎臓・尿管・膀胱・尿道)に問題がある場合が多いです。
そのため、
- 腎臓内科
- 泌尿器科
などが推奨されます。
そのほか、女性の場合は、おりもの異常によって尿が白く濁ることもあるため、かかりつけの婦人科への相談で問題ありません。
尿の濁りと免疫力の低下 – 疲労・ストレス
尿路の細菌感染や血尿によって、尿が濁ることがあります。そして尿路の感染リスクを高めるひとつの要因となるのが「免疫力の低下」です。
免疫力とは字のごとく、疫(病気)を免れる力です。仕事や子育てなどで忙しく、なかなか十分に寝られない日々が続いたり、疲労がたまり過ぎている状態が続くと、免疫力が低下して体調を崩しやすくなります。
また過剰なストレスは自律神経の乱れを誘発し、免疫システムがうまく機能しなくなるため注意が必要です。疲労やストレスを感じたらしっかりと休息、リフレッシュを心がけましょう。
尿が濁る腎臓の病気
腎盂腎炎
腎臓内で作られた尿がはじめに集まる部位を腎盂(じんう)といいます。腎盂腎炎(じんうじんえん)は、腎盂に細菌が侵入して腎臓にまで炎症が広がる感染症です。ほとんどの場合が、尿道から入った細菌が、膀胱・尿管・腎盂へと入り込む(上行性感染)といわれています。
腎盂腎炎の特徴的な症状は高熱で、悪寒や身体がブルブルと震えたりするような症状(悪寒戦慄:おかんせんりつ)を伴うことが多いです。また、腎盂の炎症によって尿中の白血球が多く混じるようになることで、尿が白く濁ることがあります。さらに腰・背中に叩打痛を伴うなど、全身症状が現れます。
腎結石
腎臓内の腎盂で尿の成分が固まって石になったものを腎結石(腎臓結石)といいます。比較的、スペースが広い腎盂に小さい石があるだけなら症状が現れにくいですが、石がある程度の大きさになって細いところに引っ掛かると、尿がせき止められ激痛が走ります。
このように、腎結石が尿管などの下部尿路に移動してくる過程で、石と尿路の粘膜が擦れて傷ができ血尿の症状がでる場合があります。
腎結核
結核とは、結核菌が原因となって発症する病気です。結核は肺に起こることが多い(肺結核)ですが、全身に広がって、リンパ節・皮膚・骨・腹膜・腸・尿路・卵管・精巣などにも病巣をつくり、様々な症状を引き起こすことがあります。
尿路のひとつである腎臓に起こる結核を、腎結核といいます。腎臓は尿管や膀胱(ぼうこう)ともつながっているため、尿をつたわってさらに下部尿路系にも結核菌が蔓延してしまうことがあります。
尿路感染が起こると、背中に痛みを感じたり、頻尿や血尿などの尿トラブルを起こすことが多くなります。
腎がん
腎臓にできるがんを、腎がん(もしくは腎細胞がん)といいます。腎がんは初期段階では無症状のため、がん検診や別の目的で行った画像検査などで発見されることが多いです。
腎がんが進行すると、
- 肉眼的血尿(目で見て分かる血尿)
- 腰背部痛
- 腹部腫瘤
といった「古典的三微」と呼ばれる症状が見られるようになります。
肉眼ではわからない程度の血尿によって、尿が濁ることがあるため、異変に気付いたら早急に受診することが大切です。
尿が濁る尿路の病気
尿管結石
尿管に石が詰まったものを、尿管結石といいます。尿管の少し狭くなっている部分(生理的狭窄部)に石が引っ掛かると、尿管の粘膜が傷つき血尿の症状が現れます。また突然腰や脇腹、下腹部に激痛が走り、吐き気や嘔吐、冷や汗などの症状を伴います。
尿管結石は生活習慣の問題が要因となる場合が多く、再発しやすい病気であるため、医師に相談しながら予防することが重要です。
急性膀胱炎
膀胱炎は大腸菌などが尿道口から入り込んで炎症を起こす感染症です。発症は女性に多く、性交渉をはじめ、ストレスや疲労、寒冷なども要因となることがあります。
急性膀胱炎は、排尿時の終わりのところで、強い痛み(排尿痛)を感じるのが特徴的です。そのほか、下腹部の不快感をはじめ、残尿感・頻尿、尿の混濁や血尿などの尿トラブルがみられることが多いです。
膀胱炎は生活習慣を変えないと症状を繰り返すことも多いため、医師に相談して予防に努めることが大切です。
尿道炎
尿道炎は、尿道に細菌が感染して炎症を起こす感染症です。尿道炎の多くが、淋菌やクラミジアなどによる性感染症です。男女ともに起こる感染症ですが、女性の場合は膣や子宮の感染症になる傾向があります。
原因菌によって多少、症状に違いはあるものの、膿が尿に混ざるため尿が濁ったり、尿道分泌物の増加や排尿痛などの症状がみられます。パートナー間で、感染してしまう(うつす、うつされる)リスクがあるため、一緒に治療することが望ましいです。
尿が濁る性感染症(性病)
性器クラミジア感染症
クラミジア・トラコマティスという細菌が性器に感染することで起こる感染症です。感染経路は性行為で、日本でもっとも感染者数の多い性感染症とされています。
男性の場合は、排尿時の違和感や痛み、尿道の入り口から透明もしくは粘着性のある膿や分泌物が出ることがあります。そのため、尿は濁ったように見えます。女性はおりものが増える程度であることが多いです。男女ともにクラミジアに感染しても無症状または違和感程度の症状のこともあります。そのため、感染が広がりやすい性病のひとつです。
クラミジアは性器だけでなく、喉(咽頭クラミジア)や目(クラミジア結膜炎)にも感染するリスクがあるため、パートナーとともになるべく早く適切な治療をすることが推奨されます。
淋菌感染症
淋菌とよばれる細菌が、性行為などが感染経路となって発症する病気です。
男性の場合は排尿時の違和感や痛み、尿道の入り口から分泌物(乳白色の膿)が出ることがあります。そのため、尿が白く濁ります。痛みが強くなって、前立腺炎や精巣上体炎といった病気を発症することもあるため注意が必要です。
女性の場合は無症状であることも多く、自覚症状がある場合はおりものが増える程度であることがほとんどです。
尿が濁る男性特有の病気
前立腺炎
前立腺は男性だけにある臓器です。膀胱の下部にあり、尿道をとりまくように位置しています。この前立腺に炎症が起こるものを前立腺炎といいいます。
前立腺炎の多くが、大腸菌が尿道から侵入してくるのが原因で起こります。先に膀胱炎を発症し、菌が降りてきて感染が広がることもあるため注意が必要です。男性の場合、排尿痛や頻尿などの排尿症状と合わせて、発熱がみられたら、前立腺炎が疑われます。(女性は腎盂腎炎である場合が多いです。)細菌感染によって膿が尿に混ざるため、尿が濁ることがあります。
腫れた前立腺が尿道を圧迫すると、排尿できなくなることもあるため早めの治療が必要です。
前立腺がん
前立腺に発症するがんが「前立腺がん」で、50歳以上になると発症リスクが増えていきます。
前立腺がんの初期段階では無症状であることが多いですが、進行すると前立腺が大きくなり、尿道が圧迫されて排尿障害(排尿困難や残尿感)が起こります。がんからの出血すると、肉眼ではわからない程度の血尿によって尿が濁ることもあります。
尿が濁る女性特有の病気
尿の濁りの検査と対処法
血液によって腎臓に運ばれたからだの不要物は、余分な水分とともに尿として体外へ排出されます。そのため、尿検査によって尿の成分や性質、量などを調べることで、からだのどこかに異常がないかどうかを診断することができます。
尿検査では、主に
- 尿色
- 尿量
- 尿比重
を調べます。
体内の水分が低下すると尿の色は濃くなり、尿量が減少して尿比重が上昇します。逆に水分が増加すると尿の色は薄くなり、尿量が増加し、尿比重は低下します。このように、尿比重を調べることで尿に含まれる物質の濃度を推測できます。尿に混濁があるときは、膀胱など尿路の感染症や腎臓の病気が疑われます。
尿潜血とは
尿路(腎臓や尿管、膀胱など)に異常があると、尿の中に赤血球が混じって血尿が生じます。尿潜血とは、試験紙によって尿中のヘモグロビンの有無を調べる検査です。試験紙は、尿中の赤血球の数によって色調が異なり、血尿の程度がわかるようになっています。
尿潜血の基準は陰性です。もし尿潜血陽性だった場合は、腎・尿路系の病気あるいは筋疾患などによる全身疾患の可能性を疑います。尿潜血陽性を示しても疑われる病気は多いため、必要に応じて追加の検査を実施していきます。
こちらの記事の監修医師
木町通クリニック森本 玲 先生
© ヨクミテ|医師監修の医療メディア, Inc. All Rights Reserved.