最終更新日:2023.11.13 | 投稿日:2023.09.07

しゃっくりが止まらない原因は?ストレスとの関連、長引くときの対処法を解説

しゃっくりが止まらない原因は?ストレスとの関連、長引くときの対処法を解説

何かの拍子に突然はじまる「しゃっくり」は、日本では「しゃくりあげる」が語源であると言われています。方言として「ひゃっくり」と呼ぶ地域もあるようです。英語だとhiccup(擬声語)、あるいはhiccough(咳)とよばれます。

何かの拍子に突然はじまる「しゃっくり」は、止めようとしてもすぐには止まらない、時に厄介な現象です。ほとんどのしゃっくりは長くても数時間もすれば自然におさまりますが、何週間も続くこともあります。その場合、何らかの病気がひそんでいる可能性があるため注意が必要です。

本記事では、医師監修のもと、しゃっくりが止まらない原因と、1日何回も繰り返す、何日も続く持続性吃逆について解説しています。

しゃっくりが止まらないときはどうする?- 正しい止め方

血液中の二酸化炭素濃度を上がると、脳神経の興奮が抑制されます。それによって、脳が信号の発信源となっている、しゃっくりなどのけいれんがおさまりやすいことが知られています。

下記のように、さまざまなしゃっくりの止め方が知られています。

  • 息を止める(こらえる)
  • 冷たい水を飲む
  • 水でうがいをする
  • 舌をつかんでひっぱる
  • のどの奥を綿棒などで刺激する
  • スプーンに盛った砂糖をすばやく飲みこむ
  • びっくりさせる
  • レモンをかむ

など

とくに、息を止めたりする行為は呼吸の回数が少なくなり、血中の二酸化炭素が上昇します。また、冷たい水を飲むと、しゃっくりが止まるといわれていますが、これは、しゃっくりを引き起こす刺激と同じ刺激をあたえて、脳を刺激になれさせて、しゃっくりを引き起こしている神経の興奮を抑える効果があると考えられます。

効果が見込めるものもありますが、あくまでも民間療法(*1)で効果が不明なものも多いです。また、いずれも効果には個人差があり、医学的に確立された止め方はありません。

*1:民間療法(みんかんりょうほう)→ 民間で伝わった療法で、科学的根拠に基づかない手法

やってはいけない、しゃっくりの止め方

医学的観点からは、正しいといえるしゃっくりの止め方はありませんが、逆に、やってはいけない危険な止め方があります。

  • 紙袋を口に当てて自分の呼気をふたたび吸う
  • 二酸化炭素ガスを直接吸う

などの行為は、窒息を誘発したり意識を失ったりする危険性があります。

血中の二酸化炭素濃度を上げるためとはいえ、絶対にやらないようにしてください。

しゃっくり(吃逆)の発症原因

しゃっくりは、医学的には吃逆(読み方:きつぎゃく)とよばれています。

  • 横隔膜(おうきゃくまく)
  • 呼吸助間筋(こきゅうろっかんきん)
  • 声門(せいもん)

とよばれる場所の筋肉が、はげしく収縮する(けいれんを起こす)現象です。

横隔膜は肺の下側にある筋肉の膜で、上下に動くことで、肺が膨らんだり縮んだりして呼吸が行われます。呼吸助間筋とは、肋骨を引き上げて肺がおさまっている空間を広げるための筋肉です。声門は、のどにある空気の通り道の部分の筋肉です。

しゃっくりがおきるとき、脳から横隔膜と吸気助間筋に対して、筋肉をちぢませる信号が急に発信されます。すると横隔膜が一気に下がるとともに、肋骨が引き上げられ、肺が広がって息が吸いこまれます。

それとほぼ同時に、声門の筋肉にも脳から信号が行き、声門が突然閉まってしまいます。

それによって、あの「ひっく」とあの独特の声が出てしまう仕組みになっています。

脳から信号が発せられるたびに、しゃっくりが1回起こります。つまり、しゃっくりがつづいている間は一定の時間を置いて、断続的に脳から信号が発信されていることになります。

しゃっくりの信号を発するのは脳の「延髄」という部位で、内臓や皮膚などへの刺激が延髄に伝わると、反射的にしゃっくりの信号が発生すると考えられています。

しかし、どの程度の刺激でしゃっくりが発生するのか、信号が発せられる回数やタイミングがどう決まるのかなど、くわしい仕組みは未だ明らかになってはいません。

胎児もしゃっくりをすることが知られていて、出生後は成長するにつれて、しゃっくりは出にくくなるといわれています。胎児にとって、しゃっくりとは、のどや鼻につまった異物を除去するための行動だという説もありますが、はっきりと解明はされておりません。

しゃっくりを誘発する原因

しゃっくりを引きおこす原因として最も多いのは、早食いや炭酸飲料を飲むなどして、急激に胃がふくらむこと(胃の膨満)があげられます。

また、冷たい食べ物などによる胃の急激な温度変化や、冷たいシャワーを浴びるなどの行為も、しゃっくりを引きおこす要因になります。

胃には、脳に直接つながる神経(迷走神経)が非常に多く通っているので、胃への刺激はしゃっくりを誘発しやすいと考えられています。

たとえば腹部の手術中に、腹腔内を水で洗浄するなどして直接的に胃に刺激が加わると、高い確率でしゃっくりが起きます。

しゃっくりが止まらない際の受診の目安

一時的なしゃっくりは、健康な方でもごく普通に起きる現象なので、とくに体の異常を心配する必要はありません。

一方で、2日間(48時間)以上つづく「しゃっくり」は、何らかの病気が隠れている可能性が考えられます。

しゃっくり自体が直接の原因で死に至ることはありませんが、長時間つづくしゃっくりは体力を消耗させるうえに、睡眠中もつづくような状況では、眠りも浅くなる可能性が高いです。

そのため、2日間以上つづくようであれば、一度受診を検討してください。

しゃっくりは何科を受診する?

症状がしゃっくりのみが問題の場合、約2日間を目安に様子を見て症状が改善されない場合は、内科を受診します。

内科で総合的な診断を受けて、何らかの疾患が原因でないかを検査しましょう。

しゃっくりに加えて、

  • 激しい胸部の痛み
  • 激しい腹部
  • 激しい頭痛

など、そのほかの症状がある場合は、緊急を要する可能性が高いです。

このような状況の場合は、速やかに救急外来を受診して下さい。

長引くしゃっくりは病気の前兆?

長引くしゃっくりは、その背景になんらかの病気が隠れている場合があります。受診した際には、これまでの病歴をはじめ、画像診断などさまざまな検査を実施して、基礎疾患がないかどうかを調べます。

持続性吃逆と難治性吃逆に隠れた病気

2日間を超えるしゃっくり(吃逆)を、持続性吃逆、1カ月以上続くしゃっくりを難治性吃逆といいます。難治性吃逆はまれな状態でありますが、かなりの苦痛を伴うといわれています。

逆流性食道炎などの胃腸の病気や腫瘍(がん)など、さまざまな病気が持続性のしゃっくりの原因となることが知られています。また、脳疾患やその後遺症でしゃっくりがおこることもあります。

分類 病気
消化器系疾患 逆流性食道炎、消化性腫瘍 など
中枢神経系疾患 脳梗塞、脳出血、脳腫瘍、脳動脈瘤、てんかん など
呼吸器系疾患 肺炎、副鼻腔炎、睡眠時無呼吸症候群 など
腎疾患 腎機能不全による尿毒症 など
外科手術 胸部や胃の手術 など
それ以外 ストレス、多量飲酒、薬剤の服用による誘発 など

長時間しゃっくりが続いているということは、しゃっくりを誘発する神経が、継続的に刺激されているということです。持続性のしゃっくりの治療には、神経の興奮をおさえる薬が使われる場合があります。

しゃっくりに関するよくあるご質問

しゃっくりが止まらないのですが、コロナとの関係はありますか?

新型コロナウイルス感染症により肺炎を起こしている場合、しゃっくりが出ることがあります。

新型コロナウイルスに感染して重症化すると、肺炎を起こすリスクが高くなります。この肺炎の起きる場所が横隔膜の付近だった場合、「しゃっくりが止まらない」という症状がでることも少なくありません。また、新型コロナウイルスの治療薬としても使われている「デキサメタゾン」というステロイド薬の影響で、しゃっくりが誘発されることがあります。同様に、気管支拡張薬や血圧降下薬などの薬の副作用として、しゃっくりが認められています。

しゃっくりが原因で死亡することはありますか?

しゃっくりが直接的な原因で死に至ることはありません。

しゃっくりが直接的に死亡の原因になることはありませんが、しゃっくりが長く続く・繰り返す原因としてなんらかの病気が隠れていることもあります。それが重篤な疾患である可能性は否定できませんので、一度、受診することを推奨します。

しゃっくりの原因がストレスである可能性はありますか?

ストレスがしゃっくりを誘発する引き金になることがあります。

精神的ストレスが影響したり、なにか心理的な理由で起こった過呼吸がしゃっくりを誘発することもあります。とくに子どもの場合は、ストレスや興奮などがしゃっくりを誘発することも少なくありません。大人の場合は、逆流性食道炎や胃炎などの消化器官の疾患によってしゃっくりを発症することもありますが、ストレスによって暴飲暴食を繰り返すと消化器官の疾患になりやすいため、ストレスとの関連性はあると考えます。

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こちらの記事の監修医師

鎌田 広基

鎌田内科クリニック鎌田 広基 先生

岩手県盛岡市の鎌田内科クリニック、院長の鎌田です。昭和42年1月19日、当地に父が診療所を開設し、平成5年に小生が着任して現在に至っております。その間、平成8年に老人保健施設”銀楊”の開所により、父はその施設長、小生は当院の院長に就任しました。

当クリニックがこれまでの歳月を歩むことができたのは、ひとえに、皆様のお力添えのおかげと、深く感謝しております。
地域医療の益々の発展と、皆様が健康で豊かな毎日を過ごしていただけるように、スタッフ一同、より一層精進して参ります。今後とも鎌田内科クリニックを宜しくお願い致します。

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