最終更新日:2023.11.09 | 投稿日:2023.11.09

新型コロナウイルス後遺症とは?症状が長引く・繰り返す原因、検査・治療法を解説

新型コロナウイルス後遺症とは?症状が長引く・繰り返す原因、検査・治療法を解説

2020年に突如、世界中で猛威を振るった新型コロナウイルス感染症。コロナに感染した方の中には、感染当初の症状は一旦落ち着いたものの、ふたたび不調が訪れて数週間から数ヶ月間に渡り症状が長引いている患者さんがいらっしゃいます。この病態を厚生労働省は「罹患後症状」と呼んでいます。日本国内では新型コロナウイルス後遺症(コロナ後遺症)と呼ばれることが多いようです。

本記事では医師監修のもと、新型コロナウイルス感染症の後遺症について、その症状と原因、検査・治療法を解説しています。

新型コロナウイルス後遺症とは?

2020年2月以降に起こった新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)後に、さまざまな症状が「長引く」「繰り返す」という事例が世界中から報告されています。

海外では「LONG COVID≒ながいコロナ感染症」や「Post-acute COVID-19 syndrome ≒ 急性症状が治まった後のコロナ感染症症候群」などと呼ばれています。

未だその原因やメカニズムなどについて不明の点が多くあり、国内外で研究調査が続けられています。国内からの報告では、罹患後症状に関する男女別の検討では、診断後3カ月時点で男性に43.5%(259/595名)、女性に51.2%(174/340名)、診断後6カ月時点で男性に38.0%(209/550名)、女性に44.8%(141/315名)、診断後12カ月時点で男性に32.1%(143/446名)、女性に34.5%(96/278名)といずれの時点でも罹患後症状を1つでも有する割合は女性に多かったというデータがあります。

海外での45の報告(計9,751例)の系統的レビューでは、COVID-19の診断後2カ月あるいは、退院後1カ月を経過した患者の72.5%が何らかの症状を訴えていました。別の海外の57の報告(計25万例)の系統的レビューでは、診断あるいは退院後6カ月かそれ以上で何らかの症状を有するのは、54%と報告されています。

新型コロナウイルス後遺症の定義・診断基準

COVID-19の罹患後症状(いわゆるコロナ後遺症)は、COVID-19ウイルスに罹患した後に、感染自体は消落ち着いたにもかかわらず、発症から持続する症状、また回復した後に新たに出現する症状、さらに症状が消失した後に再び生じる症状など様々な症状の全てをさしています。

世界保健機構(WHO)は、新型コロナウイルス後遺症は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、他の疾患による症状として説明がつかないものとしています。そして、通常は新型コロナウイルス感染症の発症から3カ月経った時点にもみられ、倦怠感、息切れ、思考力や記憶力低下など、日常生活に影響することもあるとしています。

新型コロナウイルス後遺症の症状

新型コロナウイルス感染の後遺症(Long COVID)として、以下のような症状がみられます。

呼吸器の症状

  • 長引く咳、痰が絡む
  • 息切れ(息苦しさ)
  • 動悸がする
  • 胸の痛みや違和感がある

お腹の症状

  • 腹痛を繰り返す
  • 下痢を繰り返す
  • 胃が痛い、気持ちが悪い、食欲低下

全身の症状

  • 倦怠感、疲労感が続く
  • 微熱を繰り返す
  • 身体が痛い(関節痛、筋肉痛)

そのほかの症状

  • 頭痛、頭重感がある
  • めまいや耳鳴りが続いている
  • 喉がつかえているような気がする
  • 集中力が続かない
  • 味覚が戻らない、味がしない(味覚障害)
  • 匂いがしない(嗅覚障害)
  • 記憶が薄れる(記憶障害、認知力の低下)
  • 気持ちが沈む、不安を感じる
  • 毛が抜ける(脱毛症状)

など、コロナ後遺症の症状は多岐にわたります。

また、後遺症はコロナ感染症の重症度によらず起こるとされています。

新型コロナウイルス後遺症の原因

新型コロナウイルス後遺症(Long COVID)の原因は諸説ありますが、すべてまだ仮説の段階で実証されたものはありません。現段階で後遺症の要因として報告されているものをいくつか紹介します。

新型コロナウイルスは、肺や心臓、肝臓そして血管を中心に身体のさまざまな場所にある受容体に付着します。そのウイルス自体が各臓器へ直接的な障害を起こす引き金となってるのではないかと考えられています。

ウイルスに感染するとわたしたちの体内では、それに対抗しようと「サイトカイン」という化学物質を生成し、炎症反応を起こします。

サイトカインが過剰に分泌されサイトカインストロームと呼ばれる免疫機能の暴走の影響も指摘されています。

また、コロナウイルスの抗体ができていないために、免疫応答が不十分であることが症状への長期化に繋がっているのではないかとも考えられています。体内の恒常性を維持しようとして、体の免疫がずっとウイルスと戦い続けている状態です。

新型コロナウイルス後遺症の診断と治療

先述した通り、新型コロナウイルス感染症の後遺症<(Long COVID)の定義・診断基準は、まだ確立されていません。そのため、コロナ発症後に一定の期間が経過した後にも「症状が改善しない」または「治っては再発を繰り返す」というような患者さんそれぞれの病態の経過をみて診断をしていきます。

ほかの病気が関連している可能性も否定できないため、総合的な判断をします。この「一定の期間」というのも、国によって期間にばらつきがあるのが現状です。

現段階ではコロナ後遺症に対する根本的な治療法はないため、各症状に応じた経過観察と対症療法(症状を和らげる治療:たとえば、咳の症状に対して咳止め薬を処方するなど)を行います。

これまでの知見によると、後遺症のほとんどが時間経過とともに改善することが多いとされています。しかし、一定程度の方に症状が残っているという報告もあり、注意が必要です。

まずは新型コロナウイルス感染症を診断された主治医、もしくはかかりつけ医へ、一度お電話で診察が可能かどうかを確認した上で受診してみましょう。

コロナ後遺症で注意が必要な精神症状

コロナ後遺症の大きな特徴として、

  • 治療効果に個人差が大きい
  • 良くなってはまた悪くなるといった不安定な経過をたどる

といったことがあげられます。

治療を続けていく中でなかなか症状が改善せず

  • 気持ちが憂鬱になる
  • 気分がのらない
  • 何をしても楽しめない

など、精神面の変化・症状に悩まされる患者さんが多いのも事実です。

そのため、内科的な治療を基盤に、心のケアをプラスして、心身の双方からのサポートが重要であると考えます。

新型コロナウイルス後遺症のよくあるご質問

感染後の後遺症はどの程度の頻度で起こりますか?

世界保健機関(WHO)は、COVID-19感染者の約10〜20%がの方に後遺症を発症する可能性があると報告しています。

2022年度に厚生労働省が科学的調査を実施し、大規模な集団を対象に症状の発現率やその経過を調査しました。この調査で、感染経験者の中で後遺症を経験する割合は、未感染者が経験するさまざまな症状の割合の2〜3倍であることが明らかになりました。

しかし、感染者の間で後遺症がどれほどの頻度で発生するかについては、研究の定義や方法論の違い、さらに何らかの症状を有する方人々が調査に応じている可能性が高い回答バイアスの問題があるため、正確な頻度を特定することは難しいとされています。

現時点で世界保健機関(WHO)は、これまでの様々な研究報告から、COVID-19感染者の約10〜20%の方に後遺症を発症する可能性があるとしています。

後遺症がある場合、新型コロナウイルスを他の人に移してしまうことはありますか?

罹患後症状により、他の人に感染させることはありません。

一般的に、発症2日前から発症後7~10日はウイルスを排出していると言われています。この期間以降に罹患後症状があったとしても、他の人に感染させることはありません。

子どもも後遺症を経験することはありますか?

子どもでも感染後の後遺症が確認されています。

しかし、2022年度に実施された広範な住民調査によると、感染期間が同じであった場合、成人における長期症状の発現率は5歳から17歳の子どもたちに比べて2倍から4倍高かったとの結果が出ています。また、国際的な観察においても、大人と比べて子どもにおける長期症状の出現率は低い傾向にあるとされています。

新型コロナウイルスのワクチンは感染後の後遺症に有効ですか?

感染する前にワクチンを接種することが、感染後の長期症状のリスクを減らす可能性があるという研究結果が出ています。

既に長期症状が出ている人にワクチンを接種した場合の効果については、症状が改善することを示す研究結果もあればそうでないものもあり、結論はまだ出ていません。これについては引き続き詳細な研究が必要とされています。

感染後の後遺症を避けるにはどうしたらいいですか?

新型コロナウイルスに感染しないことが何よりも重要です。

そのためには、手洗いをはじめとした手指の衛生管理、適切な換気、そして必要な場面でのマスク着用など、基本的な感染防止策をしっかりと実行することが推奨されます。

新型コロナウイルス後遺症に関する論文のご紹介

本記事を監修していただいた髙倉一樹医師は、2021年に横浜市元町にあるUnMed Clinic Motomachiに来院された計286名のコロナ後遺症患者さんのデータを解析して、そこで得られた結果を米国の科学誌である『Journal of Medical Virology』誌に論文報告しております。論文は英文になりますがご参考ください。

論文はこちら

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こちらの記事の監修医師

髙倉 一樹

UnMed Clinic Motomachi髙倉 一樹 先生

横浜市中区元町にあります「UnMed Clinic Motomachi 」院長の髙倉です。地元横浜でクリニックを開院しています。

今までに学んできた事、経験した事を最大限活かし、医学と科学をしっかり結び付けながら、患者さんに求められている医療を最大限表現したいと思います。そのために、今の時代の流れの中で、積極的に新しいものを取り入れながら、地元への医療貢献、さらにはここ横浜からグローバルな医療を皆様にお届け出来る様、精一杯努力する所存でおります。

現在、当院ではオンライン診療を立上げ、メディカルダイエット(肥満外来)、不眠症外来、コロナ後遺症外来を実施しております。全国の患者様に対応しておりますので、お気軽にホームページのオンラン診療予約からご予約ください。

温かい御支援の程、何卒、宜しくお願い申し上げます。

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