単なる迷信である可能性が高いです。
チョコレートやピーナッツなどを食べすぎると鼻血が出る、という俗説を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
そのような特定の食べ物によって鼻血が出るという医学的な根拠はありません。
また、興奮すると鼻血が出るという話もよく聞きます。興奮して血圧が上がると出血しやすくはなりますが、興奮による血圧上昇ぐらいでは、鼻血が出る可能性は低いと考えます。
誰もが1度は経験したことがあるであろう「鼻血」の症状。医学的には「鼻出血」とよびますが、一般的には鼻血と呼ばれることが多いです。
鼻血は、鼻の内部からの出血を指します。突然、鼻血が出ると顔に血がつくために驚くことが多いですが、まずは冷静になることが大切です。落ち着いた状態で、適切な止血を行いましょう。
本記事では、耳鼻咽喉科の医師に監修していただき、鼻血がよく出る・止まらない原因と、鼻出血の受診の目安を解説しています。
目次
鼻の中の空間(鼻腔)を左右にしきる壁(鼻中隔)の中は、多数の血管が走っています。
なかでも鼻中隔の表面、鼻の穴から2センチメートルほどのところにある、キーゼルバッハ部位(Kiesselbach’s area)に毛細血管が集中しています。
私たちが経験する鼻血の多くは、このキーゼルバッハ部位からの出血によるものと考えられています。
この部位には細かい血管が多数集まり、粘膜の表面近くで編み目のように入り組んでいます。
鼻の穴近くにあるため、鼻をほじったり、強く鼻をかんだりすることで傷つきやすいです。
表面の粘膜が破れて血管が切れて、出血しやすくなります。
鼻の穴を両側からつまんでキーゼルバッハ部位を圧迫するのが正しい鼻血の止め方、適切な対処法です。
下を向き、血液を飲みこまないようにすることが重要です。
一方、ティッシュを鼻につめて止血しようとする人は多いと思いますが、これはあまりおすすめできない止血方法です。
丸めたティッシュはかなり固いため、無理に鼻につめると粘膜を傷つける恐れがあります。しかも、ティッシュを取りだすときに、せっかくできたかさぶたがはがれてしまい、また出血してしまうリスクがあります。
鼻血を外に出さないようにと上を向いてしまちがちですが、鼻血を飲み込んでしまうため適切な方法ではありません。血液を飲みこむと、人は気分が悪くなり吐いてしまいます。これは、気持ちのよいことではないだけでなく、吐いたものがのどにつまる可能性があるのでとても危険です。
また、鼻の上部(眉間の下あたり)をつまんだり、首のうしろをたたいたりする人もいますが、これらの動作に鼻血を止める効果ありません。
鼻を押さえている間は、横になるのを避け、座った状態でいてください。横になると、血が喉に流れ落ち、気分が悪くなる可能性があります。また、せきこんで血を吐き出すと、血圧が上がり出血が止まりにくくなることもあるので注意が必要です。
これらのポイントをしっかりと守り、それでも出血が止まらない、または量が多い場合は、専門医の診察が必要です。
たまに出る少量の鼻血であれば、ほとんどの場合、健康上の問題はありませんので、正しい方法で、あわてずに対処してください。
警戒すべき鼻血の指標
量:大量に出血し、洗面器が満たされる程度
時間:30分以上出血が止まらない
頻度:出血がすぐに止まるものの、数時間後や数日後に繰り返される
もし止血を試していても、大量に出血する、または長時間止まらない場合は、動脈出血のリスクが高く医師の介入が必要です。
繰り返し出血がある場合、それは全身的な出血しやすい状態か、鼻内に何らかの良性または悪性の腫瘍がある可能性が考えられます。
このような場合、耳鼻咽喉科の専門医による診察が強く推奨されます。
鼻血が止まらないなど、鼻血に関する症状で受診される患者さんは、圧倒的に冬が多いです。
これは、乾燥によって粘膜が傷つきやすくなっていることが原因だと考えられます。
さらに、寒い外と暖かい室内の温度差が大きく、血圧の急激な変化が起こりやすいことも要因の1つと考えます。
子どもは大人よりも粘膜が薄くれ破れやすいため、よく鼻血をだします。鼻にボールが強く当たるなど、ケガによって鼻の中を直接傷つけていなくても、鼻血が出ることがあります。
子どもの鼻血の9割は、鼻をほじるなどしてキーゼルバッハ部位を傷つけることが原因だといわれています。
キーゼルバッハ部位からの出血は5〜10分もすれば止まり、出血量もそれほど多くありません。
子どもの鼻血のほとんどは、このような軽度の鼻出血に留まります。
風邪や鼻炎等の疾患は、鼻の粘膜に炎症を引き起こす要因となります。これによって、鼻水やくしゃみが頻繁に出るようになり、鼻を頻繁にかむ必要が出てきます。この繰り返しの結果、鼻の粘膜が損傷し、それが鼻血の原因となることがあります。
さらに、発熱がある場合、血管が拡張する傾向にあり、その結果として鼻血が出やすくなる可能性が高まります。発熱による血管の拡張は、体温を下げるための自然な反応ですが、これが鼻血のリスクを高める要因となりえます。
起立性調節障害は、体の急速な成長に対して自律神経(交感神経と副交感神経)がうまく対応できず、その結果として多くの症状が出現する疾患です。この状態では、立ち上がった際に交感神経が適切に活性化しないため、脳への血流が低下し、めまいやふらつきといった症状が現れます。
起立性調節障害による鼻血は、基本的に自律神経のバランスが崩れることが根本的な原因です。自律神経の不調は、鼻腔内の微細な血管にも影響します。具体的には、血流が不安定になることで、鼻腔内の脆弱な血管が破れやすくなることがわかっています。
とくに起床後や午前中は自律神経が乱れやすく、この時期に鼻血が出やすいとされています。また、小学校の高学年から中学生にかけては、体が急速に成長する段階にあるため、この症状が特に現れやすいと考えられています。
代償性出血(または代償月経)は非常に特異な現象で、主に女性の月経周期と関連しているケースが報告されています。
この状態は、一般的には女性ホルモン(特にエストロゲン)の影響を受け、子宮以外の場所(多くの場合は鼻)から出血が見られます。
月経が正常に行われていないとき、体は何らかの形で出血の必要性を感じ、その結果として鼻血が出るとされています。
医学的には完全に解明されているわけではありませんが、ホルモンレベルの変動や内分泌系の異常が関与している可能性が高いとされています。
代償性出血は病気ではないとされていますが、これが頻繁に発生する場合は、月経異常やその他の健康問題が潜んでいる可能性もあるため、婦人科での専門的な評価と診断が推奨されます。
とくにこれが思春期や性成熟期、更年期に見られる場合、ホルモンバランスの大きな変動が起きている時期であるため、より注意が必要です。
中高年になると、出血がなかなか止まらず、出血量も数百ミリリットルをこえる鼻血が突然出ることがあります。このような鼻血の多くは、キーゼルバッハ部位ではなく、鼻の奥を通っている大きな血管からの出血である場合が多いです。
これらの血管が外傷で傷付く可能性は少なく、血管がもろくなる病気などが原因で出血することが多いです。
大量の出血をともなう鼻血には、高血圧による動脈硬化など全身性の病気がひそんでいる可能性も少なくありません。
はとくに、血管の壁が固くなり、もろくなっていることがあります。
そのような場合、鼻の奥の血管が切れて、大量の鼻血が出やすくなります。
鼻血が止まらない、鼻血がくりかえし出るという場合は、「白血病」や「血友病」といった血液の病気がひそんでいることがあるため注意が必要です。
これらの病気では、血を固める血液中の成分が少なくなっており、出血が止まりにくい状況にあります。また、非常にまれなケースでは、大量の鼻血がくりかえし出る「オスラー病」という遺伝性の病気があります。
ほかにも、鼻の中に腫場(がん)ができ、腫場から出血する場合もあります。
いずれにせよ、出血が止まらないなど、いつもとちがう鼻血だと感じたら,すぐに病院へ行きましょう。
そのような患者さんには、薬品や電気のこてを使って、キーゼルバッハ部位や鼻の奥の血管などの出血部位を焼き固める治療が行われます。
この処置で一定期間は鼻血の再発を防ぐことができます。
単なる迷信である可能性が高いです。
チョコレートやピーナッツなどを食べすぎると鼻血が出る、という俗説を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
そのような特定の食べ物によって鼻血が出るという医学的な根拠はありません。
また、興奮すると鼻血が出るという話もよく聞きます。興奮して血圧が上がると出血しやすくはなりますが、興奮による血圧上昇ぐらいでは、鼻血が出る可能性は低いと考えます。
ちば耳鼻咽喉科クリニック千葉 隆史 先生
© ヨクミテ|医師監修の医療メディア, Inc. All Rights Reserved.