黒い下痢の原因は、さまざまな要因が考えられますが、その多くは消化管内での出血によるものです。便が黒くなる理由は、血液が消化管内で酸化されることによるものが一般的ですが、特に下痢を伴う場合、出血の他に消化器の異常が強く疑われることがあります。
以下に、黒い下痢の主な原因を解説します。
消化管からの出血(特に上部消化管)
最も重要な原因は、上部消化管(食道、胃、十二指腸)からの出血です。出血した血液が胃酸や消化酵素に触れることで酸化し、便が黒くなります。上部消化管出血によって血液が消化管を素早く通過する場合、下痢の形で排出されることがあります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍
潰瘍が進行すると出血を引き起こし、その血液が黒い下痢として現れることがあります。 胃潰瘍は胃の粘膜に潰瘍ができる病気です。出血し、これがタール便の原因となることがあります。胃潰瘍は、ピロリ菌感染、ストレス、あるいは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用などが関与して引き起こされます。
十二指腸にできた潰瘍も同様に出血を引き起こし、その結果としてタール便が生じます。胃潰瘍と同じく、ピロリ菌やNSAIDsが主な原因です。
食道静脈瘤の破裂
肝硬変などの疾患によって食道の静脈が拡張し、これが破裂して出血するとタール便が現れることがあります。食道静脈瘤破裂は非常に危険な状態であり、緊急の対応が必要です。
胃がんや食道がん
消化管のがんからの出血もタール便を引き起こすことがあります。これらのがんは、出血を伴うことがあり、消化管内で血液が消化されて便が黒くなります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、長期間使用すると胃や十二指腸の粘膜に潰瘍を引き起こしやすくなります。これによって出血が発生し、黒い下痢の原因となることがあります。これらの薬剤には、イブプロフェンやアスピリンが含まれます。
感染症
感染症が原因で腸の炎症が起こり、黒い下痢が発生することもあります。特に細菌感染症や寄生虫感染によって腸内に炎症が生じ、粘膜が損傷して出血することがあります。この場合、血液が便に混じることで黒っぽい下痢となります。
大量の鉄分摂取や特定の薬剤
鉄剤の摂取やビスマスを含む薬(例:胃薬の一部)は、便を黒くすることがあります。これらの物質が腸内で酸化されると、便が黒く見えることがあります。ただし、これらの場合は通常、タール状ではなく、粘り気のない黒い便や黒い下痢が生じます。
アルコール性肝疾患
過剰なアルコール摂取が肝臓に負担をかけ、食道静脈瘤を引き起こすことがあります。これが破裂すると、急激な消化管出血を伴い、黒い下痢が発生することがあります。また、肝硬変が進行すると、消化管出血が起こりやすくなります。
メレナ(下部消化管出血による黒い便)
通常、黒い便は上部消化管からの出血に関連しますが、下部消化管であっても大量の出血があれば便が黒くなることがあります。この場合は急激な腸管の動きによって血液が消化される前に便と混ざるため、黒い下痢として排出されます。
その他の重篤な疾患
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)は、腸内の出血や炎症を引き起こし、下痢とともに黒い便を引き起こすことがあります。
胃腸の腫瘍やポリープの出血も、黒い下痢を引き起こす原因となることがあります。
黒い下痢は、上部消化管からの出血や感染症、薬剤の影響など、多くの原因で引き起こされる可能性があります。特に消化管出血は命に関わることもあるため、黒い下痢が見られた場合は早急に医療機関を受診し、内視鏡検査などで原因を特定することが必要です。軽度の場合でも、他の症状(めまい、吐き気、貧血など)が伴う場合は、特に注意が必要です。